部下育成に難しさを感じる管理職は88.2%：組織全体の課題と今後の展望

新しい時代の部下育成の課題と向き合う

近年、ビジネス環境は急速にデジタル化とグローバル化が進んでいます。そのため、企業は持続的な成長を確保するために、特に若手社員や中堅社員の育成が重要視されています。しかし、株式会社NTTデータビジネスブレインズが行った調査によると、実に88.2%の管理職が部下の育成に関する悩みを抱えていることが明らかになりました。この詳細な調査結果をもとに、部下育成における現状と課題を見ていきましょう。

調査概要

調査の対象は経理業務に従事する221名の実務担当者で、アンケート期間は2025年7月7日でした。得られたデータは、部下の育成に関連する方針や戦略、モチベーション、デジタルスキルなどを多角的に分析しています。

部下育成に関する方針

調査によると、若手・中堅社員の育成に関して、「ある」と回答した管理職は28.5%、また「一部ある」との回答が59.7%でした。合わせて88%が何らかの方針を持っていると認識しています。しかし、ほとんどが「一部」であるという実態は、実際の育成策が体系的ではなく、部門間の協力が不足している可能性を示唆しています。

属人化の解消

業務の属人化に関する対策についても調査され、具体的な取り組みを「行っている」と答えたのは26.7%、また「どちらかというと行っている」は59.3%という結果となりました。この結果から、属人化への取り組みは意識されているものの、実行が不十分であることが浮き彫りになりました。属人化が進むことで、特定の個人に業務が集中し、業務の効率性や質が低下する恐れがあります。

部下のモチベーションと育成の悩み

次に、若手・中堅社員のモチベーションについて尋ねた結果、81%の管理職が高い評価を示す一方で、育成に関する悩みを抱える管理職は88.2%でした。このギャップは、部下の業務遂行意欲と自己成長への興味・意欲の乖離を示しています。多くの部下が目の前の業務に対しては意欲的である一方で、自らのスキルアップや学びに対する姿勢が課題であることが伺えます。

若手社員の育成プログラムとデジタルスキル

さらに、新人研修の整備については、24.4%が「整備されている」と回答し、61.1%が「一部は整備されている」とのことでした。この結果は、研修プログラムが断片的であり、組織文化にフィットする形での育成が不十分であることを示唆しています。また、デジタルスキルについても、79%の管理職が現状では十分としつつも、89%の管理職がさらなる向上を求めているという矛盾が存在しています。これは、日常業務には支障がないが、デジタルトランスフォーメーション（DX）に向けた準備が整っていないといった、複雑な認識を反映しています。

課題解決へのアプローチ

これらの困難な状況を解決するためには、単なる部分的な対策ではなく、組織全体での体系的かつ戦略的アプローチが必要です。管理職が抱える育成の負担や悩みの解消に向けて、育成支援が急務であり、これが組織全体の生産性や定着率にも好影響を及ぼすでしょう。

部下育成に関する悩みが多くの管理職の間で共通して見られる中、組織としてどのように進むかは、将来的な競争力を確保するための重要な課題です。今後、各組織はこれらの課題に対し、より的確な育成プランを策定・実施し、人材の能力向上を目指すべきです。