慶大医発の再生医療ベンチャーAdipoSeedsが治験準備を進める
再生医療の新たな道を切り開くAdipoSeeds
慶應義塾大学発の再生医療ベンチャーである株式会社AdipoSeedsは、難治性皮膚潰瘍に対する新たな治療方法に向けた臨床研究の成果を受け、企業治験の準備を本格化させています。東京都新宿区に位置する同社のミッションは、「脂肪から血小板をつくり、新しい血液の流れを創る」こと。特に、医療応用が期待できるヒト脂肪組織由来の血小板様細胞(ASCL-PLC)の事業化に取り組んでいます。
最近の臨床研究では、ASCL-PLCの安全性に重大な懸念がないこと、また投与後12週間内に潰瘍が完全に閉鎖するという有効性が確認されました。この結果を受けて、AdipoSeedsは国内での第 I/II相試験を早期に開始するための準備を迅速に進めています。すでにPMDAには治験計画が提出され、調査期間を30日間終え、2025年中には症例登録の開始を予定しています。
AdipoSeedsは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ベンチャーエコシステム強化事業にも採択され、ステージ1のマイルストーンを達成。現在は次のステージへ向けた準備も進めています。 市場における新たな治療方法の誕生が期待されています。
難治性皮膚潰瘍の現状
難治性皮膚潰瘍は、動脈血流障害や静脈うっ滞によって引き起こされ、従来の治療法では改善が難しいことで知られています。特に、末梢動脈疾患や糖尿病、膠原病による血管炎が原因とされる虚血性潰瘍は、一般的な治療が施されたとしても完治には時間がかかります。また、血流改善の薬物療法や運動療法など多岐にわたる治療が行われますが、再発率も高いのが現状です。
静脈うっ滞に起因する潰瘍も同様に、長期治療が必要で、治癒までの道のりが厳しい状況が続いています。そのため、これらの難治性皮膚潰瘍を対象とした革新的な治療方法の開発が急がれています。
AdipoSeedsの取り組み
AdipoSeedsは、脂肪組織由来の血小板を医療に活用することで、血液不足の問題を根本から解決することを目指しております。既存の献血に依存する医療から脱却し、安全で低コストな血小板製剤を提供することで、治療の質の向上を図っています。
再生医療の新たな手法が、最終的には難治性皮膚潰瘍で苦しむ患者のQOL(生活の質)の向上だけでなく、医療経済にも寄与することが期待されています。AdipoSeedsの進展に、今後も注目が集まるでしょう。
この度、臨床試験の研究成果についての論文は、専門誌「Regenerative Therapy」にも掲載されており、科学的な裏付けを得たこともAdipoSeedsにとって大きな支えとなっています。これからの彼らの活躍には、ますますの期待が寄せられています。