マレーシアで進化する介護DX
日本のZIPCARE株式会社が、マレーシアの国民大学(UKM)と共同で、介護分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。この取り組みは、高齢者の健康を非装着型センシングデバイス「MAMORUNO」を用いてモニタリングし、高度なデータ分析を行うというものです。日本が培ってきた「科学的介護」のアプローチをマレーシアに持ち込むことで、急速に進む高齢化に対する新たな解決策を提示しようとしています。
背景:アジアにおける高齢化の現状
アジアは高齢化が進展しており、特にマレーシアでは2030年までに全人口の15%以上が65歳以上となる見込みです。これは日本と同様の高齢化社会を迎える転換点です。しかし、マレーシアには日本のような公的介護保険制度が存在せず、家族介護への依存や民間介護施設の不足が課題となっています。こうした背景から、要介護者のための専門的なケアが急務とされており、日本の成功モデルを参考にした「次世代介護モデル」の確立が求められています。
プロジェクトの内容:MAMORUNOによる健康データの取得
今回の共同研究では、「MAMORUNO」を通じて得られる以下の健康データを基に、新たなケア基準を策定します:
- - 睡眠パターン
- - 呼吸・心拍・体温
- - 動作検知による起立・歩行の評価
これらのデータは、日本の要介護分類にマッピングされた後、マレーシアの現場に合う形で独自のケア基準に変換されます。このプロセスにより、センサーの導入がケアの負担軽減や事故リスクの低減に寄与することを検証する予定です。実際、マレーシアの介護施設「Selcare Sakinah」での実証研究を通じて、実際の介護現場にどのように役立つのかを探ります。
研究段階と今後の展望
プロジェクトの進行は、2025年に予定されているPoC(Proof of Concept)の実施まで段階を踏んで進められます。具体的には、以下のようなスケジュールで進行中です:
フェーズ | 内容 | 時期 |
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PoC準備 | 研究設計・関係機関連携 | 2025年1月中 |
PoC実施 | Selcare SAKINAHで10台設置、モニタリング開始 | 2025年7月中 |
分析・報告 | データ比較、日本 ⇔ マレーシアとの相互分析 | 2025年8月中 |
本格連携 | 共同研究+事業開発フェーズ | 2025年12月中 |
このプロジェクトを通じて、学術的知見と実務の統合を目指すとともに、将来的にはマレーシア国内やASEAN地域への展開を視野に入れた活動に発展することが期待されています。
MAMORUNOの特長とその効果
「MAMORUNO」は、24時間365日、脈拍や呼吸、睡眠時間などの健康状態をモニタリングできます。そして、体動や室内環境もチェックできるため、高齢者の快適な生活環境を維持する支援が可能です。日本での「介護の見える化」の実績を生かし、デジタル技術を駆使して高齢者の生活の質を向上させることが狙いです。また、医療機関と連携することで、在宅介護や施設での見守りをよりスムーズに行う体制を築く計画です。
まとめ:新たな未来の介護を目指して
ZIPCAREの取り組みは、マレーシアにおける高齢者ケアの質を高めるだけでなく、ASEAN地域全体の持続可能な福祉社会の構築に貢献することを目指しています。今後の展開に注目が集まる中、マレーシアの「シルバーエコノミー」の成長を支える重要なプロジェクトとなるでしょう。高齢化が進むアジア諸国と共に、より良い未来を共創していくことが期待されます。