脳内での数の相対的表現を解明する画期的研究
最近、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の未来ICT研究所の研究チームが、ヒトの大脳が数量をどのように扱うかについての新たな知見を発表しました。この研究は、木戸照明氏(東京大学大学院生、NICT協力研究員)や四本裕子教授と林正道テニュアトラック研究員らによって行われました。研究の結果、脳内の複数の領域が数量を柔軟に扱う仕組みを有していることが確認されました。この発見は、数量処理の脳のメカニズムに関する理解を深めるものです。
研究背景と成果
これまで、特定の数に特化した神経細胞が存在する脳領域が特定されており、これらが状況によって異なる数に反応するかどうかは不明でした。脳の神経細胞が限られたリソース内で多様な数量に対応する方法が明らかになることで、このような機能がどのように活用されるのかが期待されます。
本研究では、fMRIを用いて、被験者が白黒のドットパターンを見ているときの脳の活動を記録しました。実験は3日間にわたり、異なる数の範囲を提示しました。その結果、数の範囲に基づいて相対的に捉える脳領域が存在することが確認されました。たとえば、少数のドットと多数のドットの間でも、相対的な大きさが同じであれば脳の活動パターンが似ているということが分かったのです。
視覚情報処理の階層性
研究により、視覚情報処理においては、最初は数の絶対的な表現が見られ、頭頂葉から前頭葉に進むにつれて相対的な扱いが強まることが分かりました。このような脳内の機能は、数量の認知において重要な役割を果たしていると考えられ、時間やサイズに関する理解の深化にも寄与する可能性があります。
今後の期待
この研究は数量に特化したものでしたが、他の概念(例:時間やサイズ)にも同様の仕組みが存在するのかという疑問が残ります。今後の研究によって、脳が数や大きさをどのように見ているのかの全体像が解明されることが期待されています。
この研究成果は、2025年1月6日に「Nature Communications」に掲載されました。今後、コミュニケーションにおける数の概念の処理を通して、理解や効果的な情報伝達の質が改善される事に繋がることを願っています。
参考文献
- - 論文名: Hierarchical representations of relative numerical magnitudes in the human frontoparietal cortex
- - DOI: 10.1038/s41467-024-55599-8
この研究は、NICTの倫理委員会の承認を受けており、実験参加者には事前に研究内容が説明され、同意を得ています。