低コストを実現した全自動トンネルコンクリート打設システムの導入
鹿島建設株式会社が、低コストな覆工用高流動コンクリートを用いた「全自動トンネル覆工コンクリート打設システム」を、三重県いなべ市での「東海環状自動車道養老トンネル南工事」に初めて導入しました。この新しい技術は、現場でコンクリートを流動化させることにより、大幅なコスト削減と省人化を実現しています。
新たな技術の背景
トンネル工事における覆工コンクリートは、狭い空間での施工が求められるため、流動性や強度発現が重要です。鹿島建設は2023年に、これらの特性を備えた混和剤を開発。新しい全自動打設システムとともに、この高流動コンクリートを実際の工事に導入しましたが、従来の方法では製造コストがネックでした。そのため、現場で混和剤を加え流動化させる新技術が生まれたのです。
高流動コンクリートの特徴
新たに開発されたこの高流動コンクリートは、工場で製造されたベースコンクリートに現場で混和剤を加えることで流動化されます。この方法は、工場製造の高流動コンクリートに比べてコストを大幅に抑えることが可能で、さらにスランプフローの規格を維持することができます。スランプフローはコンクリートの流動性を示すもので、工程の確実性を高め、施工過程での品質管理にも貢献します。
全自動打設システムの利点
全自動打設システムは、施工条件に応じた高流動性コンクリートの適用を可能とし、2車線断面のトンネル工事においてもその効果を発揮しています。このシステムにより、人手を大幅に減らすことで、省力化と生産性向上が実現されます。特に、混和剤の添加と繊維の同時投入を自動化することで、作業の効率化を図っています。
導入後の効果
現場導入後の検証では、スランプフローが安定しており、工場製造の高流動コンクリートと同程度の品質が確保できたことが確認されました。さらに、品質管理のシステムも導入され、全量をモニタリングできるため、トンネル施工時の品質担保が大きく向上しています。
未来への展望
鹿島建設は今後もこの技術の導入を推進し、合理的な施工を実現していく方針です。顧客のニーズに応じた高流動コンクリートの供給を行うことにより、さまざまな施工条件に対応したトンネル工事の生産性向上を目指します。
工事概要
- - 工事名称: 東海環状自動車道養老トンネル南工事
- - 工事場所: 三重県いなべ市二之瀬
- - 発注者: 中日本高速道路株式会社名古屋支社
- - 施工者: 鹿島建設株式会社
- - 工事諸元: トンネル延長(本坑)2075m、掘削断面積90.3㎡
- - 工期: 2022年8月〜2026年10月
この新たな技術が、これからのトンネル工事のスタンダードとなることが期待されます。