ウェアラブル技術で実現する飲酒検知の未来とは？日本行動医学会で発表された新成果に迫る

ウェアラブル技術で実現する飲酒検知の未来

2025年12月に相模原市立産業会館で行われた第32回日本行動医学会学術総会にて、株式会社テックドクターが新たに開発した飲酒チェック技術が注目されました。この技術は、ウェアラブルデバイスを活用してアルコールの摂取を自動的に検知するもので、健康管理の新たな可能性を示唆しています。

研究の背景

従来、飲酒の有無やその量を把握するためには通常アンケートによる自己申告が用いられてきました。しかし、この方法は、回答者の記憶の偏りや社会的なバイアスにより、正確性に欠けることが指摘されています。そこで、テックドクターは新しいアプローチを追求し、ウェアラブルデバイスから得られる多様な生体データを活用して、より客観的な飲酒検知を目指しました。

研究の概要

この研究は2022年5月から始まり、2024年9月まで続けられます。研究対象として選ばれたのは、20歳以上の同意を得た21名です。主観的な飲酒評価（前日の飲酒の有無や飲酒量）と、ウェアラブルデバイスから得られる心拍数や睡眠、活動量などのデータが、アルコール摂取の有無を推測するために分析されました。

解析方法としては、日次アンケートのデータを基にXGBoostという機械学習モデルを構築し、飲酒の識別を試みました。このモデルは飲酒の有無を識別する際、約90%という高い精度を記録しました。

研究成果

得られたデータでは、睡眠中の心拍の変動が飲酒の判別において重要な指標とされ、非歩行時の心拍数の増加も識別に寄与したことが分かりました。ただし、性別や年代、飲酒量の違いによって精度が変わることも確認され、今後の更なる改善が求められるとされました。また、飲酒が翌日の睡眠パターンや活動量に影響を及ぼすことも示されましたが、その影響の程度には個人差が見られました。

社会的意義と将来の展望

この研究の結果は、一般の消費者が日常使用するウェアラブルデバイスでアルコール摂取を高精度で検知できる可能性を示すものであり、健康リスクの早期発見や予防には極めて有用です。今後は、このデータを活用して個々に最適化されたヘルスケアの提供を目指しています。

また、ウェアラブルデータの研究から得た知見は、他の生体情報分野にも応用できる可能性を持っています。例えば、飲酒によるデータノイズの除去によって、様々な健康データの分析精度が向上することが期待されています。

今後、テックドクターではさらに多様なデータ収集とアルゴリズムの改良を進め、より多くの人々が安心して利用できる技術へと発展させることを目指しています。興味を持った研究者や開発パートナーの協力を広く募っているとのことです。

まとめ

ウェアラブルデバイスによる飲酒検知技術は、日常の健康管理において革新をもたらす可能性があります。第32回日本行動医学会での発表は、今後の医療分野におけるこの技術の発展に注目が集まる契機となるでしょう。テックドクターは、この研究から得られたインサイトを基に、さらなる社会実装を進めていく予定です。今後が楽しみな技術です。