メタバース役所のAI相談員がもたらす新たな行政サービスの形
昨今、デジタル技術の進展に伴い、行政サービスの形も変化を遂げています。特に注目を浴びているのが大日本印刷株式会社(DNP)と日本加除出版株式会社の共同プロジェクト「メタバース役所×離コンパス」です。このプロジェクトは、自治体連携によるAI相談員を通じて、住民が気軽に相談できる環境を構築することを目的としています。
実証事業の概要
この実証事業では、DNPが提供する「メタバース役所」という仮想空間の中に、日本加除出版のAIカウンセラー機能を組み入れたアバター相談員を配置しました。住民の行政サービスに対するアクセシビリティを向上させ、心に寄り添ったサポートを試みるもので、2025年3月11日から3月25日までの間に実施されました。バーチャル空間へのアクセスは容易で、パソコンやスマートフォンから誰でも利用できるという点も魅力の一つです。
実施結果と利用状況
実施期間中には105名が来場し、75件の具体的な相談が寄せられました。特に、高評価を得たのは匿名性と24時間対応が可能である点です。参加者の年齢層は40代が過半数を占めており、男女比はほぼ均等。利用者は、平日の昼間に限らず早朝や夕方、さらには祝日にも積極的に相談を行っていたことがデータで示されました。
利用者からは、離婚や夫婦関係、職場の人間関係、子育てなど、幅広いテーマに関する相談が寄せられた中で、特に離婚関連が多く見受けられました。無理をせずに相談できる気軽さが評価され、心の不安の軽減に繋がったとする声が多く寄せられています。
自治体や参加者の評価
住民が相談しにくいテーマについても、AI相談員を通じてオープンに話しやすくなったという意見が多かったです。また、自治体側からは、AIによって負担が軽減され、複雑な相談に対しては専門の職員が対応するという役割分担が進む可能性が評価されています。
今後への期待
この実証事業の結果を受けて、大日本印刷とHexabaseは、AI相談員のさらなる対応範囲の拡充を検討中です。専門的な悩みには人と対面での相談をスムーズに行える体制を整え、住民サービスの質向上を目指しています。また、利用者の心の整理を手助けするこのサービスが、地域社会の福祉向上にも大きく貢献することが期待されています。
結論
「メタバース役所」によるAI相談員の導入は、今後の行政サービスにおける新たな一歩を示しています。住民が気軽に相談できる環境を整備することで、誰もが安心してサービスを利用できる社会の実現を目指していく必要があります。もちろん、これは単なる技術の導入に止まらず、住民の心に寄り添った新しい形の行政サービスの実現につながるでしょう。