2025年に向けてのサイバーセキュリティ転職市場の動向
株式会社コトラが発表した『サイバーセキュリティ転職市場 2025年最新動向』では、2024年までの求人数や企業ニーズの急成長について詳しく分析されています。この報告書は、コロナ禍以降の社会状況において急増するサイバーセキュリティの人材需給を示唆しています。特に注目すべきは、グローバルなサイバー攻撃の高度化と中小企業のセキュリティ対策の重要性に関する理解が深まる中、求人数が伸びている点です。
コロナ禍以降の求人数の変化
2024年の求職市場は、コロナの影響を受けた2019年から2020年の求人が増加した時期に似ており、急成長が見られます。特に年収1,000万円以上のハイクラス求人が堅調である一方、年収1,000万円未満のミドルクラスの求人も増えており、この2つの市場が共存しながら求人数を牽引しています。
企業の多くは、すでにさまざまなセキュリティソリューションを導入済みですが、今後は中堅・中小企業向けのコンサルティングビジネスが期待されています。サイバー攻撃の深刻化により、これまで意識が低かった企業も、セキュリティへの投資が急務となり、コンサルティングファームとの協力がますます拡大しています。
各業界別の求人動向
特に事業会社とSIerの求人が顕著に増加しており、2024年はその成長が特に目立っています。実務経験がない者でもチャンスが増えており、SEとしてのスキルを持ちつつセキュリティ分野にもチャレンジする条件付きの採用スタンスが広がっています。また、大手金融機関でも求人の細分化が進んでおり、それぞれの専門分野での人材を求める動きが顕著になっています。
金融機関の求人動向
大手金融機関では、セキュリティ専任のチームが設置されており、独自の専門分野で新たな求人が増加しています。ハイクラス人材に求められるスキルも多様化しており、リーダーシップやマネジメント能力が重視されてきています。これにより、求人内容が細分化し、企業ごとに採用された人材の役割も明確化されています。
コンサルティングファームの戦略
2024年、コンサルティングファームは中堅企業のニーズに目を向けるようになり、全体としての業務依頼が増加しています。特に「全社のセキュリティ業務を全て任せられる」という常駐型スタイルの需要が高まり、コンサルタントとして深く企業に関与するスタイルが強調されています。金融分野における新しいガイドラインも大きく影響しており、ガイドラインの遵守が求められ、新たな求人が生まれています。
SIerにおけるセキュリティ市場の成長
SIer業界でも、サイバーセキュリティ市場は拡大が続いています。企業側が求めるセキュリティの知見や経験が増える中で、国内製品よりも海外製品が強い影響力を持ち、SIer各社が海外ベンダーとのアライアンスを強化しています。これは、セキュリティ分野の商機を見出し、キャリアをアップデートするための戦略でもあるのです。
中小企業のセキュリティ対応
特に、中小企業においては過去の改善事例が使えるようになってきたため、より効果的にセキュリティ対策を講じることができるようになっています。コンサルティングファームも、多様なソリューションについての成功事例を持ち、クライアントに対する提案力が向上しています。これにより、企業は具体的な対策を手に入れることができ、今後も市場の広がりが期待されます。
将来的な展望
2025年に向けたサイバーセキュリティ市場は、これまで以上に多様化した人材の受け入れを進め、新たな成長機会を生むでしょう。特に、IT経験者がセキュリティ領域にシフトする動きや、セキュリティ専門職が求められる市場が一層加速することが予想されます。中小企業に対するセキュリティのニーズは今後も増加し、サイバーセキュリティ業界そのものの成長が期待される時代に突入します。
中川貴史氏の分析は、脅威インテリジェンスやDX、生成AIへのシフトを含め、変化し続けるセキュリティの現状を理解する上で重要です。今後も新たな技術と市場の動向に目を向け、未来のセキュリティ業務に取り組む人材に期待が募ります。