女子の進学選択に関する親の期待とジェンダー視点の影響

女子の進学選択における親の期待とその影響

近年、日本では女子の大学進学率が上昇しているものの、難関大学への出願率は未だに男子よりも低いという現実があります。この問題に焦点を当て、早稲田大学やハーバード大学の研究チームによる新たな研究が発表されました。今回の研究は、高校生の進学選択を行う際に親の期待がどのように影響し、特にこれが性別によって異なるのかを明らかにすることを目的としています。

研究の背景

日本における女子の進学率は、男子とほぼ同等になりつつありますが、特に理工系の難関大学において女子の進学が少ないという構造的な問題が背景にあります。この現象は、単に学生本人の志望によるものだけでなく、親の期待や意識に大きく影響されている可能性があります。

研究を行ったのは、政治経済分野で著名な尾野嘉邦教授を始めとするチームで、3,000人の成人を対象にした実験調査を行いました。この調査では、架空の高校生のプロフィールを基に、親がどんな大学に進学を勧めるか評価してもらいました。

研究結果

調査の結果、女子が「女子学生が多い大学」や「女子向きの文系学部」を選ぶ場合、親は強くその進学を勧める傾向にあることが分かりました。特に女子向けとされる文学部への受験は親から高く評価されますが、「工学部」などの理系学部への進学は、親から勧められない場合が多いことが浮き彫りになりました。

また、男子に比べて女子の進学に経済的便益を見込む親は少なく、伝統的な性役割意識を持つ親は、女子の難関大学受験を勧めない傾向があります。このように、親の意識が女子の進路選択に与える影響は大きく、特に社会に根付いた性別による固定観念が強力に働いていることが示されました。

教育への示唆

本研究では、大学選びにおける親の無意識的バイアスが、女子の進学においてどれほどの影響を持つのかを示しました。これは、進学格差の根本にある一因とされ、今後の教育政策における重要な考察材料となります。特に、入試制度の改革や進学支援策についても、新たな視点を提供するものです。

日本国内においても、理工系国立大学が「女子枠」を設けるなど、様々な対策が進行中です。これらの取り組みが、社会や家庭にどのような影響を与えるかを考え直す必要があります。

今後の展望

今後は、親の影響だけでなく、実際の進学行動との関連性を探る調査が重要です。実際の出願データとの連携や、家族内での意思決定プロセスを深く掘り下げることで、進学選択における多様な要因を明らかにすることが期待されます。

また、女子が自らの希望に基づいて自由に進学できる環境を整えるためには、保護者や教育者が性別にとらわれず柔軟な価値観を持つことが必要です。進学選択という重要な局面において、未来を見据えた適切な指導が求められています。

この研究は、進学格差の新たなアプローチを示す重要なものであり、多くの子どもたちが自らの意思で進路を選ぶことができる社会の実現に向けた第一歩となることでしょう。