教育と福祉の新たな拠点「ソーシャルインクルージョンヴィレッジ」
最近、教育と福祉を融合した「ソーシャルインクルージョンヴィレッジ」が2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。このプロジェクトは、社会福祉法人檸檬会が推進し、「誰一人取り残さない社会」の実現を目指すものです。遊休化した大学跡地を活用して、多様な人々が働き、学び、遊ぶことができる小さなコミュニティを形成しています。
コミュニティデザインの考え方
このプロジェクトにはいくつかのデザインポイントがあります。第一に、長い歴史を持つ建物を活かしながら、その息遣いを残すことが挙げられます。第二に、利用者にとって居心地のよい空間を提供し、自分らしく活躍できる場所を創造すること。そして最後に、地域の自治体や企業との強力な連携を通じて、持続可能な事業を目指す姿勢です。
課題に取り組む様々なアクション
このプロジェクトは、社会での構造的な排除や少子化による大規模施設の空き問題といった二つの課題に対処しています。檸檬会は、設立から18年間にわたり、児童福祉や障がい福祉を通じて多様な人との関わりや居場所作りに取り組んできました。しかし、それだけでは解決できない新たな問題が浮上しています。
例えば、多様性を尊重する意識は高まっているものの、それが社会の随所に根付くには時間がかかる現実や、少子化の影響で増加する解体できない大規模建物がもたらす地域力の低下も懸念されています。これらの課題を解決するために、SDGs(持続可能な開発目標)の「不平等の是正」や「健康と福祉」といった目指すべき目標を踏まえたプロジェクトが展開されています。
プロジェクトの成果と進展
現在、ソーシャルインクルージョンヴィレッジは、教育や福祉を通じて、彼らの生活の質を向上させる取り組みを行っています。敷地内には日本語学校や通信制高校、就労支援施設など状態を整え、さまざまな人々が共に過ごし交流できる環境が整っています。また、屋内外に遊び場や飲食店も併設されており、約1万人の人が月に訪れる奈良おもちゃ美術館や1日150名が訪れる就労支援施設が存在します。
これまでの取り組みによって培った関係をもとに、地域の自治体や企業との共創が進んでおり、福祉と地域経済の循環が実証されています。官民連携で余剰施設を活用し、地域課題を解決するための持続可能なモデルをつくりあげています。
プロジェクト概要
敷地名:FSS35キャンパス
敷地面積:13万㎡
土地所有:奈良県三郷町
主要施設:通信制高校、障がい者就労支援施設、奈良おもちゃ美術館など8棟
* 対象:特に奈良に住む子育て家庭や障がい者、外国人留学生、高校生
このように、ソーシャルインクルージョンヴィレッジは、懸念される地域課題に向き合い、社会福祉と教育の新たな形を示す、地域再生の先進的な取り組みとしてその道を歩んでいます。私たちもこの先駆的なプロジェクトの動向に注目し、地域と共に発展する姿をぜひ見守っていきたいものです。