はじめに
大阪市とテックタッチ株式会社が連携し、AIを駆使して市民のニーズを可視化した結果を発表しました。このプロジェクトは、従来の調査方法では捉えきれなかった市民の「本音」を明らかにし、新たな施策立案の材料を提供することを目的としています。本記事では、今回の実証実験に関する詳細を掘り下げていきます。
背景
2025年に締結された連携協定を受け、大阪市とテックタッチは、バックオフィスのデジタルトランスフォーメーション(DX)や、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を進めています。従来、行政機関は年に一度のアンケートや市民からの意見に頼っており、日々の困りごとや小さなニーズに関しては把握が難しい状況でした。社会が変化する中で、より柔軟で迅速な政策対応が求められています。
実証実験の内容
この実証実験では、社会的課題として妊娠・子育てに関するSNS投稿を対象に、AIを活用して市民のニーズを抽出しました。具体的には、以下の様な方法で行われました。
1.
AIによるニーズの抽出
AIエージェントが、膨大なSNSデータから日常の「困りごと」や「期待」を自動的に抽出し、潜在的なニーズを可視化しました。
2.
施策案の作成支援
抽出されたニーズをもとに、AIが具体的な施策の方向性を生成。これにより、担当者が施策案をさらに深めるための「たたき台」を提供しました。
3.
実用性評価の実施
AIによる分析結果と施策案が、実際にデジタル統括室の職員によって評価されました。どのように活用できるか、根拠として使えるかが問われ、職員の意見も反映されました。
実証から得られた知見
実験を通じて、SNS投稿を親カテゴリや子カテゴリ、感情に基づいて構造化しました。これにより、妊娠・子育てに関する課題を整理し、それに対する施策や改善点も見出されました。
例えば、1つ目のケーススタディでは、産後の食事支援に関するニーズが浮かび上がりました。具体的には、体力不足から食事準備が大変であるという声が多く、地域の飲食店と連携した支援が求められました。もっと根本的には、今後の施策として産前産後の食事支援の制度化が提案されました。
また、家庭内における役割分担の不足も問題視されており、解決策として家庭内支援の情報発信が求められました。このように、本実証実験は様々な視点から市民のニーズを照らし出すことに成功しました。
デジタル統括室の職員の評価
デジタル統括室職員を対象にしたアンケートでは、85%の職員がAI分析を「市民の意見」として扱う可能性があると回答しました。また、約63.3%の職員が、AIが提示した結果を根拠資料として使えると評価しています。これにより、AIの重要性と、従来の方法との相乗効果が確認されました。
今後の展望
実証を通じて、SNSなどのデジタルデータが行政における政策立案に有効であることが示されました。今後は、収集したデータを幅広く活用し、さらなるニーズの把握や施策の改善を推進することが求められます。一方で、AIに依存しすぎないよう、職員のリテラシー向上も重要な課題です。
結論
テックタッチと大阪市の取り組みを通じて、AIの活用が市民ニーズの把握において如何に有効かを改めて認識しました。今後の政策施策において、デジタルデータとAIの活用がより一般化することが期待されます。行政が市民の声に耳を傾け、より良い社会づくりに寄与することができるよう、心から期待しています。