2025年5月に刊行された高瀬乃一の『貸本屋おせん』(文春文庫)が、なんと啓文堂書店時代小説文庫大賞を受賞しました。この栄誉ある賞を受けることは、高瀬さんにとって大きな喜びであり、業界内外からの注目を集めています。この受賞を記念して、啓文堂書店では9月16日から11月15日まで全店で受賞記念フェアが開催されるとのこと。
啓文堂書店時代小説文庫大賞は、井の頭線や京王線沿線の地域で広く親しまれている啓文堂書店が主催しています。各出版社から推薦された時代小説文庫の中から、書店員の投票によって選ばれた10作品が候補に挙げられ、それからさらに販売数を基にして受賞作品が決定されるという厳選なプロセスを経ています。
高瀬乃一のデビュー作である『貸本屋おせん』は、すでにオール讀物新人賞を満場一致で受賞し、また日本歴史時代作家協会賞新人賞も受賞するなど、まさに三冠を達成した傑作です。物語は、江戸時代の浅草にある貸本屋を舞台に、女主の「おせん」が数々の事件に巻き込まれながら、読書を愛する人々に本を届ける姿を描いています。板木の盗難や幽霊騒ぎ、幻の書物探しなどのミステリアスな出来事が次々と展開され、本好きの方にとってはまさにたまらない一冊です。
受賞の知らせを受けた高瀬さんは、嬉しい気持ちを伝えており、「貸本屋を通して未読の読者と出会う機会をいただけたと思っています。本当にありがとうございました」と感謝の意を表しています。本作の中で描かれる主人公おせんは、情に厚く、おせっかいである一方、計算高い一面も持つ女性商人です。彼女が抱く読書への情熱が、今回の受賞につながったとも言えるでしょう。
これからも高瀬乃一の活躍に目が離せません!現在、彼の近作『梅の実るまで―茅野淳之介幕末日乗―』が山本周五郎賞や中山義秀文学賞の候補作にも挙げられており、いよいよ注目が高まっています。
受賞記念フェアでは、書店全店で『貸本屋おせん』をはじめ、続編の『往来絵巻貸本屋おせん』も取り扱っていますので、ぜひこの機会にお立ち寄りください。本好きの方はもちろん、初めて高瀬の作品に触れる方も、彼が描き出す時代背景に引き込まれ、感動を味わえること間違いなしです。
高瀬乃一のプロフィールを少し紹介すると、彼は1973年に愛知県で生まれ、名古屋女子大学短期大学部を卒業後、青森県に在住しています。彼の作家としての始まりは、2020年に『をりをり よみ耽(ふけ)り』でオール讀物新人賞を受賞したことで、以来、数々の作品を世に送り出しています。
本書の書誌情報は、タイトルが『貸本屋おせん』で、著者は高瀬乃一、文庫判で定価は836円(税込)、発売日は2025年5月8日、ISBNは978-4-16-792364-8です。この素晴らしい時代小説を通じて、高瀬乃一の世界に足を踏み入れてみることをお勧めします。