半導体デバイスの電流通路を可視化する新技術の登場
株式会社東レリサーチセンター(TRC)が国内で初めて、積層デバイス内部の電流の流れを可視化する新しい分析サービスを開始しました。近年、AIやモビリティ、情報通信技術の進展により、半導体や有機ELディスプレイ、太陽電池など様々なデバイスが用いられるようになりましたが、これらは複数の機能層を重ねた積層デバイスとして設計されています。
電流の流れと性能の関係
積層デバイスは、電子や正孔と呼ばれる電荷が各層及びその界面を通じて移動することにより機能します。これらの電荷がスムーズに移動するかどうかが、デバイスの性能に大きく影響を及ぼすため、電流の通り道に関する理解が必要不可欠です。
しかし、従来の技術では元素の組成や化学状態を評価することはできても、電流の流れを決定する電子状態を各層や界面別に評価することが難しく、性能のばらつきや劣化の原因を特定することができませんでした。
新サービスの内容
TRCの新サービスでは、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)技術を用いて、試料の表面をナノメートル単位で削り出しながら、同時にX線光電子分光(XPS)や反射電子エネルギー損失分光(REELS)の測定を行うことで、積層デバイスの各層及び界面の電子状態を解析します。この手法により、以下の特長が実現されます。
- - 各層や界面ごとの電子エネルギー状態を定量的に可視化
- - 微小領域での実デバイスへの適用が可能
- - 測定時の損傷を最小限に抑えることで、有機材料を使った積層構造にも対応
- - 同じ領域での分析を行うことで電子状態と組成・化学状態の相関関係を明らかにできる
未来への展望
この新サービスにより、半導体デバイスの性能のばらつきや不良の原因解析が実施可能になり、有機ELや太陽電池の性能向上や劣化メカニズムの解明が進みます。また、新材料や新構造の開発において設計の指針が得られるため、開発効率の改善にも寄与します。
近年、先端デバイス分野での高性能化や低消費電力化が求められる中、電子状態の評価はこれらの課題解決を推進する上で欠かせない要素となっています。TRCは、半導体、ディスプレイ、エネルギーデバイス分野の課題を解決するための分析サービスを展開していく予定です。
用語解説
- - 電子状態:電子のエネルギー分布を表す概念で、電荷の移動のしやすさを決定する重要な要因です。
- - GCIB(ガスクラスターイオンビーム):多数の原子からなるクラスターをイオン化し、ナノメートル単位で試料表面を加工する技術です。
- - XPS:X線を用いて試料の元素組成や化学状態、電子状態を評価する手法です。
- - REELS:試料表面に電子線を照射し、放出される電子のエネルギーを測定することにより、電子構造に関する情報を得る手法です。
TRCの進化する技術により、さらに高性能なデバイスの開発に期待が寄せられています。