ふるさと納税での新たな支援の形
ふるさと納税を利用したフードバンク「こどもふるさと便」が、このたび消費者庁が実施する「令和7年度食品ロス削減推進表彰」において、消費者庁長官賞を受賞しました。「こどもふるさと便」は、ネッスー株式会社が運営し、こどもたちの食の支援と地域の食品ロス削減を同時に実現しようとしています。
日本の問題:子どもの貧困と食品ロス
日本国内でのこどもの貧困率は約9人に1人とされています。ひとり親世帯では、なんと約50%が貧困に直面しています。その一方で、毎年日本では500万トン以上の食品ロスが発生しています。これは、1人あたり日々「おにぎり1個分」に相当する量が捨てられている計算です。これらの数値は、食品ロスを削減するための具体的なアプローチが必要であることを示しています。
ですが、必要とするこどもたちに余剰食品が届く仕組みは未だ整っていません。新しい財源を確保できない及び寄附した食品を運ぶための物流が不足しているためです。これを踏まえ、ネッスー社は「こどもふるさと便」という新しいプログラムですべての課題を解決しようとしています。
食品ロス削減に向けた独自の取り組み
「こどもふるさと便」は、ふるさと納税を通じて、地域の生産者や農協、漁協と協力し、地域産品をこども食堂や困難を抱える子育て世帯に届ける仕組みです。寄附者には、地域の特産品を得られるだけでなく、こどもたちにも直接支援を送る機会を提供します。この参加のしやすさから、多くの方が「損がない社会貢献」として参加できるようにしています。
また、「こどもふるさと便」では、規格外の野菜や未利用の魚、食品などの地元で余剰となっている食材を活用し、直接こどもたちの食支援につなげています。これにより地域の産業も促進され、持続可能な支援が実現しています。実際、2022年に神奈川県三浦市で実証実験を開始し、これまでに全国6つの自治体と連携、約90トンの食品支援を実施しました。今後はさらに約30自治体と協力を進め、2026年度には10〜20地域まで拡大し、年に1,000トン以上の食品ロス削減を目指します。
プロジェクト例:長崎県対馬市
長崎県の対馬市では、未利用魚を積極的に活用しています。対馬の豊かな海は多種多様な魚が水揚げされる一方で、流通しない未利用魚が存在します。これを地域のこども食堂に供給することにより、食品ロスを削減し、食材の有効利用と併せて、こどもたちの食育にもつなげています。
未来の展望
2025年には専用ポータルサイトが開設され、寄附者が希望する支援先を選ぶことが可能になります。これにより、より多くの方が「こどもふるさと便」に参加できる環境を整えることが目指されています。
この受賞を機に、さらに多くの自治体、企業、そして市民が協力し、年間1,000トン以上の食品ロスを削減し、こども支援を実現する活動を広げていく意向です。代表取締役の木戸優起は、「地域の食品や経験をこどもたちにつなげるこの活動を、ぜひ多くの方に参加してもらいたい」と語ります。
このように、「こどもふるさと便」は、ふるさと納税による地域支援で、食品ロス削減とこどもたちの食支援の両立を目指し、今後の成長が期待されています。