都心商業施設の新たな展望
はじめに
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)が発表した2024年第4四半期のリテール市況レポートによると、都心の商業施設は賃料の底上げを迎えており、売買活動も活発になっています。本記事では、このレポートに基づき、現在の市況や今後の展望について詳しく解説します。
経済状況の変化
2024年第4四半期、日本の実質GDPは定額減税などの影響で民間消費が伸び、年率で+1.0%を記録しています。物価上昇を反映したコアCPIは依然として高止まりしており、賃金の上昇が期待されています。特に若年層の消費意欲が高く、2025年の賃上げが見込まれる中で、消費全体にプラスの影響を与えるでしょう。
一方で、累積インフレによる実質的な賃金の増加は緩やかであり、生活防衛意識が強まっていることも指摘されています。このような状況の中、インバウンド消費は過去最高に達しており、観光業界に新たなチャンスを提供しています。
需給の動向
販売業態別に見ると、2024年第4四半期の全国小売販売高は前年同期比で2.6%上昇しています。しかし、前年好調だった商品の反動により、コア消費者物価指数の上昇を下回る実質的な減少が見られました。特に、ドラッグストアの売上は同6.7%増と健闘しており、テナントのパフォーマンスは様々です。
また、都心型商業施設の空室率はピーク時の12%から3%以下に減少しており、銀座や表参道では1%未満と推定されています。新規供給も、「複合系」施設が続々と登場し、注目を集めています。
賃料動向
第4四半期におけるプライムエリアの賃料が上昇しています。特に、ラグジュアリーブランドの出店が進んでおり、京都や名古屋においても賃料が急騰しています。例えば、京都四条通の坪単価は前年比で50%上昇し、15万円に達しています。また、神戸三宮では前年比70%の坪単価17万円と、非常に需要が高いことが伺えます。
この背景には、訪日観光客の需要を見込んだドラッグストアの出店意欲もあり、賃料はハイストリートエリアにも影響を与えています。
主な出退店の傾向
主な移転や売買動向として、ユニクロが新宿に再出店したことや、アスレジャーブランドの新たな店舗が目立つことが挙げられます。特にラグジュアリーブランドによる出店の増加が顕著で、業種別の出店比率も拡大しています。
また、銀座や表参道などの不動産購入意欲も高まっており、空室率の低下や賃料上昇を背景に新たな出店が期待されます。
アウトルック
今後、都心の商業施設は賃料の底上げが続く見込みです。また、地方都市でも新たな大型開発が計画されており、人流の更なる変化が期待されます。中でも、福岡や名古屋では注目のエリアとなり、商業施設の展望に大きな影響を与えるでしょう。
結論
C&Wのレポートから、都心の商業施設は新たなフェーズに入りつつあります。ラグジュアリーブランドや新たなテナントの出店が活発化する中で、賃料や売買動向にも注目です。各テナントは、市場動向を的確に捉えることで、さらなる売上向上を目指すことが求められています。