富士フイルムと堀場製作所が遺伝子導入装置を開発
富士フイルム株式会社(本社:東京都港区)と株式会社堀場製作所(本社:京都市南区)は、これまでにない革新技術を持った遺伝子導入装置を共同で開発しました。この装置は遺伝子治療薬の生産性を従来の約100倍向上させることができる、業界初の連続エレクトロポレーション技術を基盤としています。両社は2026年以降の市場投入を目指し、共同プロジェクトを進めています。
遺伝子治療薬とは
遺伝子治療薬は、病気の原因となる遺伝子の問題を修正するために、外部から遺伝子を体内に導入して治療する、いわば新しいバイオ医薬品の形です。これにより、今まで有効な治療法がなかった難病への新たな希望を提供する技術として、世界中で注目されています。しかし、その製造過程は非常に複雑で、効率的に遺伝子を細胞に導入することが難しく、コストが高いという課題を抱えています。
新技術の背景と目的
富士フイルムと堀場製作所は、ライフサイエンスや半導体分野で長い間相互に交流を持ち、製薬プロセスの効率化を目指した研究を行ってきました。今回の共同プロジェクトは、特に遺伝子治療薬の製造における課題を解決するために2023年に始まったものです。両社はそれぞれの強みを生かし、本装置を開発することで、社会的なニーズに応える新たな製品を生み出すことを目指しています。
連続エレクトロポレーション技術
新たに開発された連続エレクトロポレーション装置では、制御された電圧を使って細胞膜に微細な穴を開け、遺伝子をダイレクトに細胞内に注入することが可能です。現在の一般的な製造方法では、化学薬品を使って遺伝子を細胞に導入するため、複雑な反応が発生し、生産効率が制約されています。新装置はこの課題を克服し、少量から大量生産まで対応可能なフローシステムを採用することで、より高効率での製造が実現します。
市場への影響
この装置の開発は、遺伝子治療薬の製造にかかるコスト削減や生産性向上をもたらす期待が大きく、両社は特に需要が高まっている欧米市場を中心に販売を進める計画です。これにより、未解決の医療ニーズを持つ患者へのアクセスが向上し、より多くの人々に新たな治療の選択肢を提供することが可能となります。
両社のコメント
富士フイルムの取締役執行役員である飯田年久氏は、「私たちは製薬会社や患者に寄り添い、医薬品の開発から商業生産まで一貫した支援を行っています。この装置を通じてより多くの患者に遺伝子治療薬を届けられる未来を目指しています」と述べています。
堀場製作所の代表取締役社長、足立正之氏は、「富士フイルムの技術と堀場の製造ノウハウを融合させ、健康と豊かな生活に貢献できる製品を目指します。」とコメントしています。
この共同開発は、医療の未来に大きな影響を及ぼすことが期待されており、両社のさらなる成長にも寄与することでしょう。将来の遺伝子治療市場を見据えた革新技術のご注目も大いに期待されます。