生体に優しい新技術!油不使用で微小液滴を作成する革新
国立研究開発法人産業技術総合研究所の平野研主任研究員とそのチームが、画期的なマイクロカプセル生成技術を開発しました。この技術は、油や界面活性剤をまったく使用せず、生体に安全な材料を用いて直径20マイクロメートル以下の微小液滴を形成するものです。これにより、医薬品や食品、化粧品などでのマイクロカプセル応用の新たな地平が開かれます。
マイクロカプセルとは?
マイクロカプセル技術は、製品成分の品質を保ち、効果を高めるために、微細な液滴に成分を封入する手法です。これにより、効果的に成分を届けることが可能になり、医薬品や化粧品、食品などのさまざまな分野で広く活用されています。特に20マイクロメートル以下のサイズは、実用化の際に非常に重要な要素です。従来の技術では油や界面活性剤の使用が一般的でしたが、これに伴い、製品残留や環境への負荷という課題が存在しました。
新たな技術のポイント
今回の開発は、生体適合性のある水溶性材料のみを使用した新技術が特長です。この方法では、特別な装置や複雑な操作なしで、液滴を自然に生成できます。必要なのは、シリコーンゴム製のマイクロ流路を用意することだけ。水分の脱水作用を利用し、混合水溶液を流路に入れることで、自然にカプセルが形成されます。この過程で、細胞や抗体、ナノ粒子を内部に封入することも可能であり、機能性成分を効果的に取り扱うことができます。
開発の背景
マイクロカプセル技術は、近年の消費者の間での成分の透明性や安全性への関心の高まりを受けて注目されています。特に、私たちの体に触れる医薬品や食品、化粧品においては、より安全な材料を用いた製造工程が求められています。この新技術は、このニーズに応える形で開発されたものです。また、脂肪酸や界面活性剤の使用による問題を解決し、環境負荷を軽減することが期待されています。
技術の詳細
研究では、シリコーンゴム(PDMS)が持つユニークな「脱水性」に着目し、二種類の水溶液を低濃度で混合したものを使用しました。流路に入れると、流路壁から水分が透過し、流路内において濃度が高まります。この高濃度に達すると、水相分離が起こり、微小液滴が自動的に形成されます。これにより、油や界面活性剤がなくても、均一なマイクロカプセルを大量に生成することが可能となりました。
今後の展望
この技術は、医薬品や食品、化粧品分野において高い有用性を持つと期待されます。さらなるマイクロカプセルの小型化や、多様な有効成分の封入効率の向上が目標です。また、他の高分子材料にも応用可能であり、用途に応じた機能最適化が進められる予定です。
この革新的なマイクロカプセル技術により、今後更なる製品開発の進展が期待されます。当技術が、私たちの日常生活に新たな価値をもたらすことを楽しみにしています。