デジタル体験の改善が企業収益を呼び込む理由

近年、企業はデジタルエクスペリエンス（DEX）の管理に注力するようになっています。Nexthinkによる調査によれば、企業のデジタル不具合がもたらす年間の労働時間の無駄は、平均で470,000時間に達し、間接的には数百万時間に及ぶことが明らかになりました。これは、従業員一人当たり約35時間の損失、換算すると、年間で約6億円に相当します。

DEXの影響

調査に参加した474社の企業から得られたデータによると、従業員は週平均で14件のデジタルエクスペリエンスの不具合を経験しています。デバイスがクラッシュしたり、アプリの動作が不安定になることは、単に業務の流れを中断するだけでなく、生産性やチーム間のコラボレーションにも深刻な影響を及ぼします。特に、質の悪いDEXは従業員のフラストレーションを増加させ、生産性を8倍も低下させる可能性があるというデータもあります。

日本では、特に労働力不足が深刻です。生産年齢人口の減少や労働生産性の低迷が影響し、企業は効果的に人材を活用するためにDEXの改善が不可欠となっています。質の良いデジタル体験は、限られたリソースを最大限に活用するための重要な要素となるわけです。

DEX改善の必要性

調査結果は、業務の中断が単なる生産性低下を引き起こすだけでなく、アウトプットの質をも低下させることを示しています。平均的なデジタルのネガティブ体験は約3分続きますが、研究によれば、5秒未満の中断でもエラーが3倍に増えるとのことです。集中力が途切れることで戻るまで約23分かかるともあり、企業がこの問題に取り組まなければ、競争優位性を失うリスクが高まります。

特に小売業や医療、金融サービス業界では、テクノロジーに起因するロスタイムが顕著であり、生産性の向上にはDEXの改善が不可欠です。しかし、業種を問わず多くの企業が直面する問題であり、業務中断のイベント数はほぼ同じであることが示されています。このことは、ロスタイムの原因がイベント自体ではなく、その深刻さによるものであることを示唆しています。

企業の将来を見据えたDX戦略

Nexthinkのジャパンプレジデントである萩野武志氏は、「デジタルの小さな障害が生産性に大きな影響を及ぼす。一度問題が発生すれば、業務全体に波及する恐れがある」と警鐘を鳴らしています。企業のIT部門が根本的な問題を解決せず、従業員のデジタルエクスペリエンスを向上させる努力を怠れば、有能な人材を他社に奪われるリスクが高まります。

このような背景から、デジタル体験の質が企業の存続に直結する時代が到来しています。技術投資はもはや後回しにできない経営課題であり、DEXの改善は企業戦略の中核となるべきです。