自死遺児の心に寄り添う絵本『さよならなんかしない』が刊行
自死を原因に親を失った子どもたちへの支援をテーマにした絵本、『さよならなんかしない』が2025年11月に発売されます。この本は、特に日本で初めて「自死遺児」を主人公とし、深い悲しみを抱える子どもたちに寄り添うことを目的としています。
書籍の概要
『さよならなんかしない』は、佐藤まどかと森山花鈴が作成した文章をもとに、高橋和枝がイラストを手がけています。この絵本は自死遺児支援プロジェクトにより企画され、特に自死によって親を失った子どもたちの心情に焦点を当てています。
物語の主人公、小学5年生のユウは、父親を亡くした後の心の葛藤を描いた作品です。ユウは、災難の知らせを受けた時のショックや周囲の目を気にする思春期特有の心情をリアルに表現しています。彼は、父を喪った悲しみの中で、感情を抑え込む一方で、相談することでその心の重荷を少しずつ軽くしていきます。
絵本の意義
この絵本は、自死遺児たちに「自分を責めないでほしい」というメッセージを伝えています。また、周囲の大人たちには子どもに対して事実を適切に伝える重要性が訴えられています。このような内容は、教育者やカウンセラーをはじめ、すべての大人が理解し、認識するべき大切なことです。
特に自死が深刻な社会問題となっている日本において、この絵本が子どもたちの心の支えとなり、自らの感情を受け入れる一助となることが期待されています。ユウの物語を通じて、安らげる居場所と相談できる人の存在の重要性が描かれています。
支援プロジェクトの背景
本書の企画は、自死遺族や自死遺児に関わる専門家たちの協力によて実現しました。日本における自死遺族の数は推計で300万人おり、その中の約9万人が自死遺児です。これまで、子どもを主人公にした絵本が存在しなかった中で、本作は新たな一歩を踏み出すものとなります。
その意図とメッセージ
著者たちの思いの一つは「自死についての差別や偏見をなくしたい」ということです。自殺は「いのちをそのままにした結果」ではなく、さまざまな要因が重なった末の悲しい選択であることを知ってほしいと願っています。ユウの物語を通じて、読む人が心に変化をもたらし、周囲とのコミュニケーションが良好になることを期待しています。
書誌情報
- - 書名: さよならなんかしない
- - 著者: 佐藤まどか・森山花鈴 文/高橋和枝 絵
- - 出版会社: 童心社
- - 定価: 1,870円 (本体1,700円+税10%)
- - 発売日: 2025年11月12日
- - ページ数: 65頁
- - ISBN: 978-4-494-02342-4
本書は、ただの物語ではなく、心のケアを必要とする子どもたちへの一つの手助けを試みた作品です。自死遺児の現状を知り、彼らの心に寄り添うための貴重な教材となることでしょう。