野生動物識別の新時代!アニマルトラッキングAIの開発
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)の人工知能研究センターが、野生動物の痕跡をもとに種を推測するための画期的なAIモデルを開発しました。この技術は、足跡や糞、羽、卵、骨といった多様な痕跡から動物種を推定することを目的としています。従来の方法では、専門的な知識と経験が求められるため、これまでは専門家による解析が必須でしたが、新たなAI技術により、これが大幅に簡素化されます。
アニマルトラッキングの背景
アニマルトラッキングとは、動物の痕跡からその生息状況を把握する手法で、特に直接観察が難しい野生動物に関する情報を収集するための重要な方法として利用されています。これにより、生物多様性の保全活動や環境アセスメントに貢献することが期待されています。環境への影響を最小限に抑えつつ、生息状況を的確に把握することが可能になるため、持続可能な開発への一歩となるでしょう。
技術の詳細
今回導入されたAIモデルでは、約160,000件に及ぶ痕跡データを「AnimalClue」と名付けたデータセットにまとめ、これを基にモデルを学習させました。AIは、特に羽の画像においては、65%以上の精度で種を識別できることが確認されています。この識別精度は、555種の候補の中から正確に動物種を特定するというものです。
ベンチマークの設定
また、AIモデルの性能を正確に評価するためにベンチマークも設定されており、これにより今後さらに研究が進むことが見込まれています。背景から動物を正確に識別するための高度な技術を持つこのAIは、土地開発や環境調査の現場において非常に価値あるツールです。
社会的な重要性
野生動物の生息状況を把握することで、生態系の健康状態を評価することができ、生物多様性の保全に関わる施策を講じることが可能となります。特に、土地開発やインフラ整備に伴う環境アセスメントには、事前に情報を集積することが重要です。希少種や夜行性動物など、観察が難しい種の情報を得る手段として、アニマルトラッキングがますます重要視されることでしょう。
今後の展望
産総研は、希少種についてのデータ収集を進め、AIモデルの性能を向上させることを目指しています。また、痕跡に特化した専用モデルの開発も考慮されており、将来的には、現場で撮影した画像から動物種を即座に識別できるアプリケーションの開発も計画されています。
学会での発表
この研究成果は、2025年7月29日から8月1日まで京都で開催されるMIRU2025および、同年10月19日から23日までハワイで行われるIEEE/CVF International Conference on Computer Vision(ICCV)で発表される予定です。
研究成果の入手
「AnimalClue」はGitHubからダウンロード可能です。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。詳細なデータと共に、今後の研究の参考にもしていただければと思います。
詳しい情報は、
産総研のプレスリリースをご覧ください。