ZANATとモダンデザインの融合
株式会社アクタスが開催する企画展「ボスニアが育んだ、100年の手彫りの物語」は、アクタス・青山店で12月14日までの期間限定で実施中です。ボスニア・ヘルツェゴビナを代表する手彫り木工家具ブランド「ZANAT」の魅力を深めるため、10月31日には特別なトークセッションが行われました。このセッションには、ZANATのオーナーであるオルハン・ニクシッチ氏と、デザイナーの深澤直人氏が登壇しました。モデレーターにはデザインジャーナリストの山田泰巨氏とアクタスの家具バイヤー野口礼が加わり、モダンデザインとZANATの伝統的な魅力について深い議論を交わしました。
ZANATの歴史と手彫りの技術
ZANATの歴史は19世紀末に始まり、先駆的な木彫り技術を習得した曾祖父ガノ・ニクシッチに広がります。この技術は4世代にわたり受け継がれ、2017年にはユネスコの無形文化遺産として登録されるほどの評価を受けています。深澤氏はこの伝統技術に注目し、その独自性を現代のデザインに取り入れることに情熱を注ぎました。
ニクシッチ氏の強い想い
トークセッションでは、ニクシッチ氏がZANATのブランド立ち上げ時の経験を共有しました。家族は長い間木彫りの工芸を続けてきたものの、近年の生活様式の変化に直面し、伝統工芸の存続が危うくなっていました。ニクシッチ氏は、「伝統工芸を捨てるのではなく、現代的な要素を取り入れ、新たな価値を生み出す努力が必要だ」と語り、2016年には銀行の職を辞してZANATを立ち上げることに決意しました。
深澤直人とのコラボレーション
その後、ニクシッチ氏と彼のチームは深澤直人氏とのコラボレーションを模索しました。深澤氏は、2022年のミラノ・サローネでの展示会に招待され、ZANATの独自の魅力に感銘を受けました。その印象をもとにボスニアを訪れ、共同制作を決定。深澤氏は「ZANATとのコラボレーションは、私にとって新たなモノづくりの経験でした。デザインは図面を渡すだけでなく、具体的な彫刻技術まで指示しました」と語ります。
ZANATはボスニア産の木材を使用し、地元の職人が手がけています。深澤氏はこの「Made in Local」という姿勢に強く共感し、「AIが溢れる現代において、手仕事から生まれる形には独特の魅力がある」と強調しました。製品を通じて人間の感覚に訴える力を持つ作品が生まれたというのです。
持続可能な取り組みと未来
ニクシッチ氏は、ボスニアにおける若い職人の世代交代や無駄を省くための木材の再利用についても触れ、ZANATの家具が持つ実用性とアート性に誇りを持っています。パターンライブラリーを構築し、世界のデザイナーに対応する準備を進めていることも紹介しました。
このトークセッションは、単なるデザイン論ではなく、ZANATとアクタスがどのように文化を次世代へ継承し、時代の変化に対応しているのかを深く理解する機会となりました。アクタスの野口氏も、「今後も文化やデザインを発信する使命を感じている」と強調し、ZANATとの連携はその一環であることを明言しました。
企画展の詳細
今回の企画展は、見て触れて楽しむユニークな体験ができる内容になっています。手彫りの家具は、ただのインテリアではなく、歴史や芸術性、持続可能性を内包する「記憶に残る贈り物」として存在しています。ぜひ皆さんもアクタス・青山店でZANATの魅力を体感してみてください。
開催期間: 12月14日まで
会場: アクタス・青山店 (東京都港区北青山2-12-28 1F)
営業時間: 11:00 – 19:00
ZANATとの出会いを通じて、文化やデザインの意義を感じることができる、特別な機会をお見逃しなく。