AIとIoTが変える自動車エンジン部品の瑕疵検知: 三桜工業×コズムの挑戦

AI革命と製造業の未来

近年、製造業におけるデジタルトランスフォーメーション（DX）が声高に叫ばれており、その中でAIやIoTの技術が急速に導入されています。株式会社コズムは、三桜工業の自動車エンジンパイプの外観検査においてAIを活用したPoC（Proof of Concept）を実施し、高精度な傷検知を実現しました。このコラボレーションがもたらす革新とは何か、その詳細を探っていきます。

背景と課題

自動車エンジン部品の外観検査は、車両の安全性を確保し、消費者に品質保証を提供するための重要な役割を果たしています。しかし、従来の検査プロセスは熟練作業員による目視に依存しており、作業者の経験や技術によって検査基準が異なるという問題点がありました。そのため、製造ラインがスピードアップする中、高速かつ高精度な検査が求められ、AIによる自動化の必要性が高まっていました。

三桜工業はこれらの課題を解決するため、AI技術を取り入れた外観検査システムの導入を模索していました。そこで、コズムがこのプロジェクトに参画し、PoCを通じて新たな検査プロセスの可能性を探ることとなりました。

PoCの手法

今回のPoCにおいては、自動車エンジンパイプの外観検査において、より正確な検査を行うためにラインスキャンカメラを導入しました。これにより照明環境の影響を受けにくく、高精度に外観を検査できる環境が整いました。

特に注目すべきは、AIによる傷検知においてハイブリッドモデルを採用した点です。従来、良品のデータのみを学習させたモデルでは特定の傷の検知に限界がありました。そのため、良品と不良品の両方を学習させて傷を認識する新しいアプローチが取り入れられたのです。これにより、傷のサイズや位置に関係なく正確に検知できるようになり、従来の目視チェックのばらつきを軽減することができました。

ラインスキャンカメラのメリット

ラインスキャンカメラを使用することで、物体を1列ずつスキャンすることが可能になり、微細な傷の検出がより容易になりました。また、全体を一度に撮影するエリアスキャンカメラでは捉えきれなかった部分も、細かなスキャンによって把握することができるようになりました。これにより、エンジンパイプの外観検査の在り方が劇的に変わる可能性があります。

現場での実践

今回の実験においては、AI技術だけでなく、現場のニーズに即した簡易的な検査機構も開発されました。この取り組みによって、検査が実際の運用環境でどのように機能するのかを検証し、より実践的な成果に結びつけることが可能となったのです。

PoCの成功と今後の展望

このPoCの結果、傷検出の精度は非常に高い基準に達しました。特に微細な傷や、見逃されがちな部分に対してもAIが安定した検出を行うことができました。これにより、製造ライン全体の検査品質が大幅に向上し、自動化の一歩を踏み出すことが期待されています。

今後の展望として、コズムと三桜工業は、さらに実製造ラインに合致するような処理機構の開発に取り組む予定です。リアルタイムに外観検査を行うための効率的なシステムの構築が品質向上の鍵となるでしょう。スピードと正確性を両立させるため、現場のニーズに柔軟に対応したカスタマイズも求められることでしょう。