文化財としての誇り、初期グランドピアノの修理完了と展示再開
東京都港区にある「日本楽器製造株式会社製の初期グランドピアノ」が、約2年間の修理を経て、2026年5月1日から港区立郷土歴史館での展示再開が決まりました。このピアノは、2002年に港区の有形文化財に登録され、2022年には公式に文化財に指定されました。日本のピアノ産業における重要な資源であり、港区の歴史を理解するための貴重な文化財となっています。
修理の経緯
このグランドピアノは、旧港区立氷川小学校で長年使用されていましたが、廃校後に保管され、最終的には港区立郷土歴史館に寄託されました。特徴的な塗装や装飾が歴史的資料と一致することが明らかになり、さらに調査が進められました。修理は、ヤマハ株式会社が港区からの委託を受けて、国立大学法人東京藝術大学大学院と連携して行われました。
修理の第一歩として、元々の構造と歴史的な価値を失わぬよう、修理方針を定めました。ピアノには過去においても修理が行われてきた形跡がありましたが、発音を可能にするための大きな部品交換は行わないことに決定しました。すべての部品を可能な限りオリジナルのものとし、天然由来の接着剤や修復技術を用いました。文化財の修理は専門知識を要し、東京藝術大学大学院が行う木部や外装の補修、ヤマハが響板や金属部分のクリーニングを担当し、両者の協力によって進められました。
ピアノの特徴
このピアノは幅145cm、奥行185cm、高さ98cmという標準的なサイズで、全体を黒漆塗の仕上げとし、側板には金平蒔絵の模様が施されています。金属フレームには菊唐草模様があしらわれるなど、日本の伝統的な技法が盛り込まれています。さらに、これまでの調査により、このピアノは明治36年(1903年)の「第五回内国勧業博覧会」にも出品されていたことが確認され、特に皇室との関わりも見られる有名なモデルです。
展示の再開
このグランドピアノの修理が完了し、再び一般公開されることは、地域にとっても大きな意味を持っています。港区立郷土歴史館では2026年5月1日からこの貴重な文化財の展示を再開する予定であり、地域の歴史や文化を学ぶ大切な機会となるでしょう。修理に際してのコメントをいただいたヤマハ株式会社のピアノ事業部ピアノ開発部長、泉谷仁(いずたに ひとし)氏は、貴重な修理プロセスを経て製作者の技術を肌で感じられたことに感銘を受けたと語ります。
未来に伝える重要性
ヤマハ株式会社は、楽器の保存を通じて、その文化的価値を後世に伝えることを目指しています。このピアノの修理を通じて、港区文化の発展に寄与し、さらに他の文化や歴史の保存に対する意識が高まることを期待しています。日本のピアノ産業史の一部を形作るこのグランドピアノが、再び多くの人々に愛され、演奏される日を心待ちにしています。
参考資料
- - 港区文化財総合目録 リンク
- - 国立国会図書館デジタルコレクション リンク (五回内国勧業博覧会出品審査概況)
- - 国立国会図書館デジタルコレクション リンク (五回内国勧業博覧会紀念写真帖)
- - 国立国会図書館デジタルコレクション リンク (日本樂器製造株式会社の現況)