ISO認証の返上に関する調査結果
NSSスマートコンサルティング株式会社では、ISO認証を取得した後に返上したことがある企業のISO担当者や経営者を対象に、返上の理由やその影響について調査を実施しました。実に多くの企業が3年以上の期間、ISO認証を維持していたにもかかわらず、なぜ返上を選択したのか、その背景にはどのような理由があったのかを掘り下げていきます。
調査の概要と背景
今回の調査は2025年6月に行われ、301名のISO担当者を対象に実施されました。このデータから、ISO認証の返上理由の統計や、運用にあたる具体的な経緯、返上後の影響について多角的に分析することができました。
全体の8割以上が3年以上の運用を経験しており、その中で浮かび上がったのがコスト負担という課題です。47.2%の企業が「認証維持にかかるコストが高かった」と回答しており、次いで「効果が得られなかった」という意見が続きました。これは、継続運用に対する負担感が企業判断に多大な影響を与えていることを示しています。
特に、審査費用や管理業務の負担が大きく、企業内での効率化を求められる中で、ISO認証の維持が必要ないと判断された企業も少なくないということです。
返上理由の具体例
調査の結果、返上した企業が挙げた理由の中には、具体的な意見が多数寄せられました。
- - コストの重圧:「認証維持にかかる費用が高く、他の事業に投資すべきとの判断から返上した。」(30代、男性、佐賀県)
- - 顧客の意向:「取引先からの要請がなかったため、返上を決断した。」(40代、男性、東京都)
- - 自主運用の推進:「独自での運用が可能と判断し、ISOの取得をやめた。」(50代、男性、東京都)
これらは、コスト意外の理由でも認証の必要性が見直されていることを示しています。また、社内での運用ノウハウが育っている場合、必ずしもISO認証が必要ではないとの意見もありました。
外部相談の欠如
興味深い点は、ISO認証の返上にあたり、外部のコンサルタントや専門家に相談せずに社内のみで決定した企業が31.9%も存在したということです。これは、複雑な判断をすべき場面においても、効果的なフィードバックやアドバイスが求められていない現状を示しているのかもしれません。
返上後の影響
次に、ISO認証の返上が実際に企業活動にどのように影響を与えたかについてお話しします。調査の結果、42.2%の企業が「特に影響はなかった」と回答する一方で、20.9%は「リスクへの危機感が低下した」、また18.3%は「競合他社との差別化が困難になった」と感じています。このことからもわかる通り、ISO認証の返上は、企業にとって業務戦略や市況に直接の影響を及ぼすことがあることが示されています。
具体的な影響の声
具体的には、以下のような意見が寄せられています。
- - 「取引先からの単価引き下げ要求があった。ISOを維持していた頃よりも取引条件が厳しくなった。」(30代、男性、佐賀県)
- - 「クライアントからの信頼が少し薄れたのではないかと感じる。」(30代、男性、京都府)
このように、ISO認証の返上は価格交渉や信用力に影響を及ぼす可能性があるため、企業はそのリスクを事前に把握する重要性があると言えます。
まとめ
ISO認証を返上する決断が各企業にもたらす影響は重大で、単なるコスト削減が目的である場合が多いことが分かりました。外部のフィードバックを取り入れず、自社内でのみ判断する結果、想定外のリスクに直面することがあるため、今後はより慎重なアプローチが求められるでしょう。企業の経営戦略を多角的に考え、必要に応じて専門的な意見を採り入れることが、持続的な経営の観点からも重要になってきます。