未来を見据えた低炭素型セメント「ユニバーサルクリートGX」
株式会社大林組(港区本社)と太平洋マテリアル(北区本社)が手を組み、低炭素型の高性能セメント複合材料「ユニバーサルクリートGX」を開発しました。この新しい材料は、大阪・関西万博における来場者移動EVバスの実証プロジェクトで活用されます。特に、走行中のワイヤレス給電システムのインフラとして、重要な役割を果たすことになります。
開発に至った背景
大林組は、大阪の未来社会ショーケース事業の一環として、「来場者移動EVバス」事業に協賛しています。このプロジェクトでは、EVバスが走りながら充電できるシステムの実現を目指しています。大林組は、このシステムに必要な送電コイルの埋設工事を担当し、それに伴う材料の選定が急務となっていました。
このワイヤレス給電システムを実現するためには、送電コイルを被覆する材料が非磁性であり、かつ、耐久性に優れたものでなければなりません。さらに、道路表面から浅い位置に埋設されるため、荷重への耐性も求められます。その結果、両社は「ユニバーサルクリートGX」という新材料の開発に動きました。
ユニバーサルクリートGXの特長
「ユニバーサルクリートGX」は、モルタルとポリプロピレン短繊維で構成され、磁性を持たないため、耐久性が高く、引張強度を効果的に維持します。この材料は、通常のセメント系材料よりも優れた耐久性を持ち、さらには製造時のCO2排出量を約50%削減できます。この特性は、環境に優しい素材として注目されています。
特に、大阪万博での「来場者移動EVバス」プロジェクトでは、ユニバーサルクリートGXが道路に埋設され、送電コイルの上面を覆う役割を果たします。舗装の厚さは約25mmで、これにより通行車両の重さにも耐えることができ、同時に給電効率も向上させる効果があります。
大阪・関西万博における実績
実際の大阪・関西万博会場では、ユニバーサルクリートGXを使用したプレキャストコイルユニットが製造され、埋設工事が完了しました。これにより、EVバスが走行中に効率的にワイヤレス給電を受けられる環境が整いました。
未来に向けての展望
大林組は、ユニバーサルクリートGXの特性を活かし、今後もワイヤレス給電システムでの道路施設に加え、非磁性や耐久性が重要な分野での採用を進めていく計画です。また、さらなるセメント材料の低炭素化を推進し、持続可能な脱炭素社会の実現に貢献していく意向を示しています。
このように、「ユニバーサルクリートGX」は、ただの材料ではなく、未来の社会を支える重要な一歩と位置付けられています。大阪・関西万博での実証プロジェクトを通じて、その効果と可能性が広く認知されることが期待されています。