JTBが発表した訪日インバウンドVISION2030の展望と戦略

JTBが策定した訪日インバウンドVISION2030

株式会社JTBが新たに発表した「訪日インバウンドVISION2030」は、日本国内の観光産業の発展と持続可能な観光の実現を目指す重要な戦略です。この取り組みでは、地域との共創やデータの活用を通じて、訪日外国人旅行者にとって魅力的な体験を提供し、観光資源の価値を向上させることを目指しています。2026年度には訪日インバウンドデータプラットフォーム「JTB Tourism HUB」の運用開始を目指し、データドリブンのアプローチによる事業推進が重要な柱となっています。

1. 背景と目的

日本政府は、2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に、旅行消費額を15兆円にするという高い目標を掲げています。これに伴い、訪日インバウンド市場は2024年には8兆円を超える成長が予測されていますが、依然として多くの課題が待ち受けています。特に、観光地への旅行者集中によるオーバーツーリズムや、地域ごとの人手不足などが問題視されています。これらを解決することが、全体の成長への鍵であると言えるでしょう。

2. 「訪日インバウンドVISION2030」の核心

この戦略の中心には「3つの改革」があり、各地域や観光事業者と協力しながら推進されます。具体的には、戦略的事業領域の設定、問題解決力の強化、サービスやコンテンツの創出が挙げられます。

2.1. 戦略的事業領域の整備

JTBグループは、既存事業6領域を整理し、新たに「＋1の新領域」を設定しました。これにより、地域ごとのニーズに応える体制を強化し、訪日外国人旅行者に特別な体験を提供することができるのです。コンテンツの開発では、寺院や仏閣の特別拝観など、訪日旅行者の興味を引くような新しい取り組みが進められています。

2.2. 課題解決への投資

JTBは、国内の各拠点における組織力を強化し、地域との連携を深めることで、訪日外国人のニーズや課題を丁寧に捕らえていく方針を掲げています。首都圏や関西圏だけでなく、各地方にも専任の担当者を配置し、持続可能な訪日インバウンドの発展に努めます。

2.3. サービス・コンテンツの動向

訪日旅行の目的となる新たなサービスやコンテンツの創出については、パートナー企業との連携のもと、具体的な取り組みを進めています。特に、ナイトタイムエコノミーの親和性を高めることを重視しているようです。KAWAII MONSTER CAFEとの共同開発など、地域を盛り上げるプロジェクトも始まっています。

3. データプラットフォームの役割

訪日インバウンドデータプラットフォーム「JTB Tourism HUB」は、情報の整備とシステム構築を通じて、各地区の観光事業の向上を支える重要なツールとなります。地域の特性に基づく課題の把握や分析、PDCAを実行しやすくし、各地の訪日インバウンド市場を盛り上げる強力な支援を行います。

4. CEOのメッセージ

この戦略の背景には、JTBの設立以来の歴史があります。代表取締役社長の山北栄二郎氏は、長年にわたり培ってきたノウハウを活かし、旅行者と受け入れ地域双方の課題に向き合い、新たな価値創出に貢献することを心に誓っています。「ONE JTB」として一丸となったこの取り組みが、持続可能な観光立国の実現への道筋をつけることでしょう。

これからの日本の観光が、JTBのビジョンによってどのように変化していくのか、ますます注目が高まります。