ウナギの新たな時代
2025-12-02 14:26:26

ニホンウナギの未来を切り開く画期的な細胞研究の成果

ニホンウナギの未来を切り開く画期的な細胞研究の成果



東京都立産業技術研究センターの研究者たちは、絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの筋肉組織を用いて、ウナギ独特の風味と食感に欠かせない“脂”を生産する細胞の樹立に成功しました。

研究の背景とその意義


ニホンウナギは日本食文化に深く根付いた高級魚であり、需要が高い一方で、資源が減少し、絶滅危惧種として指定されています。従来の養殖法は天然の稚魚に依存しており、環境への負荷や資源枯渇が問題視されています。そうした中、「細胞性食品」の開発が注目されています。これは、動物の細胞を培養し、肉として利用する新しい食料生産技術です。

魚類における細胞株の研究は限られていますが、特にウナギの脂肪細胞に関する研究は過去に例がありませんでした。そのため、ニホンウナギの脂を生産する細胞の樹立は、持続可能な供給の実現に向けて意義深い成果です。

研究の成果と詳細


今回樹立された細胞株は、自然不死化細胞株と呼ばれ、ウイルスや薬剤を用いずに無限増殖が可能です。3種類の脂肪前駆細胞株(JE-KRT224、JE-EK9、JE-F1140)が、実際のウナギ肉と近い脂肪酸組成を持った脂肪を生産することに成功しました。実は、この細胞株は、主に筋肉と脂肪から成る食肉の生産に寄与する可能性が高いのです。

研究プロセス


研究者たちは、ニホンウナギの筋肉組織から細胞を長期間培養し、230回以上の細胞分裂を経ても増殖能力を維持することを確認しました。その結果、間葉系幹細胞由来の脂肪前駆細胞であることが分かりました。これらの細胞は、特定の刺激により成熟した脂肪細胞に変化し、脂肪を効率的に蓄積することができます。

また、脂肪酸の一種であるオレイン酸を培養液に添加することで、脂肪の蓄積を促進することにも成功しました。市場で流通しているウナギ肉の脂肪酸組成は様々ですが、新たに樹立した細胞株が生成する脂肪酸の組成は、実際の養殖ウナギに非常に近いとされます。

今後の展望


研究チームは、すでに筋肉を形成する筋芽細胞を樹立しているため、今後はこれら脂肪前駆細胞と組み合わせて、実際にウナギ肉に近い食材を開発することを目指します。細胞性ウナギ肉の生産は、持続可能な食品供給の一環として、他の高級魚や絶滅危惧種にも応用できる可能性を秘めています。

この研究は2025年11月20日付で「npj Science of Food」に掲載され、食肉の持続可能な生産方法としての展望を示しています。将来的には、培養環境の整備により、脂質の最適化や品質の均一化が進むことで、より良い製品の提供が期待されます。都産技研は、この成果をもとに企業との共同研究を積極的に推進し、社会実装を目指していく方針です。

このように、ニホンウナギの細胞を利用した新しい食文化の形成が期待されており、次世代の食卓に革新をもたらすステップとなるでしょう。


画像1

画像2

画像3

画像4

関連リンク

サードペディア百科事典: 持続可能 ニホンウナギ 細胞肉

トピックス(グルメ)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。