新たな水素検知システムの誕生
大日本印刷株式会社(DNP)と横浜国立大学は、革新的な水素検知システムを共同開発しました。このシステムは、水素の漏れを検知するために、電気抵抗が変化する水素検知膜とRFID技術を組み合わせています。近年、クリーンエネルギーとして注目を集める水素エネルギーの安全性を高めるために設計されたこのシステムは、高度な技術を活用しており、これまでの水素検知器における課題を解決しています。
開発の背景
クリーンエネルギーとしての水素の重要性は高まっています。水素は燃焼時にCO₂を排出せず、環境負荷を低減する可能性を秘めたエネルギー源です。しかし、水素は漏れやすい性質を持ち、発火のリスクも伴うため、その安全な取り扱いが求められています。DNPは、これらの課題に対応する新たなシステムの開発に取り組むことになりました。
DNPは、RFID関連事業やシステム開発における豊富な経験を持つ企業であり、横浜国立大学工学研究院の岡崎慎司教授と協力して、水素を検知する材料や成膜技術を駆使し、火花や電池を必要としないセンサーを実現しました。これにより、着火のリスクを大幅に軽減し、安全性の高い水素検知システムが誕生しました。
システムの特長
1. 高い安全性
この水素検知システムの最大の特長は、高い安全性です。従来のセンサーは高温での動作を要求し、火花の発生リスクがありましたが、新しいシステムではこれを取り除き、電池を必要としないフィルム状のセンサーを採用しています。これにより、従来型に比べて安全性が格段に向上しました。
2. フレキシブルな設置が可能
センサーは薄いフィルムとして製造され、柔軟に形状を変えられるため、さまざまな使用場面に適応できます。水素ガスの配管やバルブ接続部など、難しい場所にも設置可能で、広範な設置を実現します。また、導入にかかるコストや時間を抑える点でも有利です。
3. 遠隔監視機能
RFID技術を利用したシステムでは、複数のセンサーを同時に監視することも可能です。離れた場所からも水素漏洩の監視が行えるため、安全管理が強化されます。作業員に無線でアラームを通知することも可能で、迅速な対応につながります。これにより、水素関連の作業がより安全に行われることを目指しています。
今後の展望
DNPは、開発した水素検知システムを水素製造プラントや関連企業に提供し、2030年度までに累計30億円の売上を目指しています。また、水素エネルギーの普及に寄与する製品とサービスの開発も進め、脱炭素社会の実現に貢献していく方針です。
この新しい水素検知システムは、クリーンエネルギーの安全な利用を促進し、未来の持続可能な社会の実現に寄与するものとして期待されています。私たちの生活や産業を支える新技術に注目が集まる中、安全性と効率を兼ね備えたこのシステムが今後どのように広がっていくのか、目が離せません。