賃上げ倒産を乗り越えるための新たな融資戦略を探る
近年、日本の中小企業は、物価の高騰と歴史的な賃上げに直面し、経営課題が深刻化しています。2026年には、この状況がさらに悪化することが懸念されています。株式会社融資代行プロが実施した調査によれば、全国の経営者306名のうち、20.3%が「賃上げ・ベースアップ」のための資金調達が必要だと回答しており、これはエネルギーコストの上昇を上回る数値です。これからの中小企業には、賃上げを未来への投資として成功させるための新しい評価基準を持った融資戦略が求められています。
1. 製造業を中心に賃上げに比例する資金調達ニーズ
調査によると、過去3年以内に資金調達を行った経営者の中で、「不動産業」が15.7%、「卸売・小売業」が15.0%、「建設業」が13.4%の割合を示し、全体の44.1%を占めています。これらの業種は、資本と労働を集約する特性を持ち、特に人件費の高騰が経営に与える影響が大きいと考えられます。最低賃金の引き上げや人手不足が影響を及ぼし、これに対する対応を怠ることは企業存続の危機に直結します。
2. 未来に向けた資金需要が高まる背景
特に賃上げやベースアップへの資金需要が急増していることは、企業が抱える重大な課題として浮かび上がります。現状の多くの企業は、日々の運転資金を確保しながら、将来的な投資である賃上げの原資を捻出することに苦しんでいます。多くの経営者は「運転資金がまず必要」としつつも、将来に向けた投資の必要性を感じていますが、融資条件をクリアすることが難しい現実があります。
3. 融資審査での評価のミスマッチ
賃上げは企業にとって必要不可欠な投資であるにもかかわらず、現行の融資審査基準では将来性が評価されにくくなっています。調査では、経営者の37.6%が「返済能力が最も重要」と感じている一方、将来性を評価されると感じている経営者はわずか5.2%という驚くべき結果が出ています。特に、事業が進むまでのタイムラグが長い業種では、過去の成績や現在の返済能力が重要視されるため、将来への投資が見過ごされる傾向にあります。
4. 2026年施行の新法で変わる融資環境
この問題を解決するための新しい法律が2026年5月から施行される予定です。この法律により、事業そのものの価値が評価され、企業の人的投資が適正に評価される基盤が整います。具体的には、技術や人材、顧客基盤を基にした「企業価値担保権」が創設され、融資の評価が変わるため、賃上げが企業成長につながる環境が進展するでしょう。ただし、経営者の中には「資料作成の負担」を懸念している方も多く、実現には課題が残ります。
新しい融資の形
この法改正は、従来の「一般入試」方式から「AO入試」方式へと変化することに例えられています。成績表(決算書)だけではなく、企業の将来の姿を示す「自己推薦書(事業性評価シート)」が重視される時代が到来します。この評価の仕方が、資金調達力や企業の生存に大きく影響するでしょう。
経営者の声
岡島光太郎代表取締役は、「賃上げはもう努力目標ではなく、事業継続のためには不可欠な条件です。しかし、融資審査の現状が過去の数字重視から脱却できていないジレンマがあります。法律が施行されることで、未来への投資を評価できる環境が整いつつありますが、経営者自身がこの新たな評価基準を使って事業の価値を見える形にする必要があります。早期に専門的な視点を取り入れ、計画的な融資を設計することが、賃上げ倒産を防ぐための鍵です」と述べています。
企業が将来への投資を意識し、賃上げを戦略的に行うための融資の動向を注視していきたいところです。