日立とエピストラ、AIを活用して医薬原料の生産を革新する取り組み

日立とエピストラ、医薬原料の生産効率を革新

日立製作所とファーメランタ、エピストラの3社が共同で進めるプロジェクトが、ライフサイエンス分野で新たな地平を切り開いています。今回、抗がん剤の生産に重要な医薬原料中間体「(S)-レチクリン」の生産において、驚異的な成果を収めました。

（S)-レチクリンの重要性とは

(S)-レチクリンは医薬品の製造過程で欠かせない中間体であり、さまざまな治療に利用される薬剤において効率的な生産を可能にします。この中間体を生産するための技術革新が、薬の安価な供給を実現する鍵となります。

画期的なプロジェクトの概要

2022年から進められているこのプロジェクトでは、AIを駆使した「Epistra Accelerate」や、ファーメランタが開発したスマートセルを使用し、微生物による生産プロセスの最適化を図りました。これにより、約4,300兆通りの条件から最も効率的な培養条件を短期間で明らかにしました。実験の結果、レチクリンの収量はなんと3.2 g/Lから6.0 g/Lへと向上し、実験回数も従来の73%削減することに成功しました。

今後の展望とグローバル展開

2025年度中にはパイロットスケールでの生産実証が計画されており、それをもとに今後の日立の事業展開が期待されています。また、日立はこの技術を駆使して、北米市場などへの広がりを見せることを目指しています。これにより、お客様の生産性向上につながる生産プロセス構築支援ソリューションを提供する予定です。

統合プロセスの確立

今回の協業は、「AI×シミュレーション×スマートセル」という統合的なアプローチにより、シームレスなプロセス開発を可能にしました。特に、バイオプロダクションの分野で記録的な収量の確保は、今後の医薬品製造に大きなインパクトを与えるでしょう。日立はこの取り組みを通じて、バイオ医薬品の分野で新たな基準を設けることを誓っています。

バイオ生産の未来を切り開く

このプロジェクトの成功は、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けた重要な一歩として位置づけられます。産業バイオ分野は従来の製造プロセスを根本から革新する可能性を秘めており、今後の発展が期待されます。特に、医薬品だけでなく、化粧品や食品原料にも応用可能な技術が進化すれば、持続可能な社会の実現に大きく寄与するでしょう。