AIが変革する小売業界の未来
AIデータ株式会社が主催した「AIエージェント×AXフォーラム〜小売〜」は、2023年11月20日に開催されました。このイベントでは、小売業界におけるAIの活用やデジタル・トランスフォーメーション(DX)について、様々な視点から議論が交わされました。以下、セッションごとのポイントをまとめました。
セッション1: 現場の知恵とデータをつなぐ
AOSグループの代表、佐々木隆仁氏は、現在の小売業界におけるDXについて議論しました。彼は、単なるテクノロジーの導入ではなく、店舗の現場の知恵とデータをうまく結びつけることが重要であると強調しました。
特に、従来のPOSデータや在庫管理が個別に行われていた現状が問題であり、これでは現場の判断が属人的になりがちです。
そのため、データを統合し、リアルタイムで可視化できる環境を整えることが、全体最適化を図る鍵となります。AIを活用したリテール業界特化型のプラットフォーム「AI RetailBooster on IDX」を紹介し、データ分析による意思決定のサポートや、全員がデータを利用可能な組織への転換方法を示しました。
セッション2: まずは行動すること
一般社団法人リテールAI協会の代表理事、林拓人氏が続き、小売業におけるAI導入の心構えについて論じました。彼は「完璧なソリューションを待つよりも、まず一歩踏み出すことが何より重要」と主張しました。
実際の現場では、AI導入に際してのハードルや疑問が多く存在しますが、林氏は小さな実験を重ねることで成功や失敗を学び、DX推進に向けたレッスンが得られると説明しました。「泥臭いDX」の実践経験を共有し、参加者に対して実行がDX成功の第一歩であるというメッセージを送りました。
セッション3: データが変える小売現場の意思決定
AIデータ社の取締役CTO、志田大輔氏は、小売現場に埋もれる様々なデータをAIが統合し、現場の意思決定を変える方法について解説しました。今までは販売担当者の経験と勘に頼る場面が多かったのですが、AIの導入によりデータを活用した意思決定ができるようになります。
「AI RetailBooster on IDX」を使って、顧客行動、在庫、天候、商圏のデータを統合することの重要性を説明し、成功事例も紹介しました。これにより、店舗や担当者の最適化を超え、企業全体の最適化を進めることが期待されています。
セッション4: 次世代コールドチェーンと物流の未来
コールドストレージ・ジャパン株式会社の後藤大悟氏は、冷蔵・冷凍物流の課題を解決する次世代のコールドチェーンについて講演しました。彼は、既存の冷蔵物流の硬直性を指摘し、需要の変化に柔軟に対応できない問題を表面化させました。
後藤氏は、自社開発の小型コールドストレージを利用した「自律分散型コールドチェーン」を提案し、現場レベルの運用効率の向上に役立ち得るとの見解を示しました。また、物流2024年問題などの課題を克服するためにはリアルタイムでの温度管理や分散型設備による最適なルーティングが不可欠としました。
このように、フォーラムでは小売業の未来を見据えた多角的な議論が行われ、有意義な知見が得られました。AIデータ社は、今後もデータとAIを活用した持続可能なビジネスモデルの構築に貢献していくことでしょう。