新たな地震評価手法の開発
国立研究開発法人産業技術総合研究所は、プレート境界の固着状態の変化を高解像度で可視化する新手法を開発しました。この手法は、地震データと地殻変動データを組み合わせることにより、固着状態の時空間的変動を捉えることができます。特に、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震前後の固着状態の変化が成功裡に見つかり、地震発生のリスク評価に寄与することが期待されています。
研究の背景
日本周辺では、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むプレート境界で大規模な地震がしばしば起こります。これらのプレート境界には、固着が強い場所と比較的自由に動く場所があり、固着が強い部分ではひずみが蓄積し、最終的に地震を引き起こします。そのため、プレート境界の固着状態を把握することは、地震発生の予測にとって非常に重要な要素となります。
従来の手法では、地殻変動データから固着状態を推測していましたが、その解像度には限界がありました。これを踏まえ、産総研の研究チームは、地震データの高い解像度と地殻変動データの長期安定性を組み合わせた手法を開発しました。
高精度な固着状態の評価
新手法は、次の四つのステップによりプレート境界の固着状態を可視化します:
1.
基準固着分布の推定: GNSSデータを基に長期的なプレート固着の状態を推定します。
2.
基準応力場の計算: 推定した固着状態に基づき、周辺地域の応力場を算出します。
3.
ミスフィット角の計算: 発生した地震が基準応力場にどの程度一致しているかを、ミスフィット角という指標で評価します。
4.
時空間分布の変化の評価: ミスフィット角の変化を時空間的に可視化し、基準状態からの逸脱を捉えます。
この手法により、東北沖のプレート境界にある1997年から2023年までの地震データを解析した結果、固着状態が2011年の東北地方太平洋沖地震前にどのように変化し、潜在的な地震のリスクを示唆していたのかを明らかにしました。
課題と今後の展望
この研究により、大震災の発生過程に対する理解が深まり、地震リスク評価の精度向上が期待されます。今後は、南海トラフや他の地域への応用、さらに機械学習を用いた解析によって手法の汎用性と精度を向上させる方針です。一方で、地震発生の複雑なメカニズムを捉えることが重要であり、さらなるデータ収集と解析が求められます。
本研究の成果は、2026年9月1日付の「Journal of Geophysical Research: Solid Earth」に掲載されました。この技術は、将来的に地震による被害を軽減するための重要な資料となるでしょう。
学術的意義
地震データと地殻変動データを効果的に組み合わせた新しい手法は、地震のメカニズムを理解する上での貴重な一歩であり、今後の防災研究に大きく寄与することでしょう。地震の発生予測は、地域の安全対策にも反映される重要な課題であり、今後の研究には大きな期待が寄せられています。