現代社会の死への疎遠感が引き起こす「疎死社会」とは
日本社会において「多死社会」との言葉が使われる一方で、「死と向き合う機会」が減少しているという逆説的な現実が近年の調査で鮮明になっています。浄土真宗本願寺派の築地本願寺は、この現象を「疎死社会」と名付け、人々の死との距離感を探る調査結果を公表しました。
1. 「疎死社会」とは何か
この調査は、2026年に行われたもので、18歳から79歳までの男女1,236名を対象に実施されました。調査結果によると、約40%の人が「死と向き合う機会・時間や経験はあまりない」と回答し、特に若年層ではお墓に関する知識が欠如していることがわかりました。核家族化や病院での看取りの一般化により、日常生活から死が遠ざけられています。個々人の人生においては、死者との別れや死についての経験が少なくなり、これによって恐怖や不安感が増していると築地本願寺は指摘しています。
2. 調査結果から見える現代人の意識
発見①:死が遠ざけられる現実
調査では、死への理解が進まず、恐怖感や不安感だけが残っている状況が浮き彫りになりました。死と向き合う機会の不足が、漠然とした不安を招いていると考えられます。
発見②:世代間の認識の違い
特に若年層は「自分の死」を恐ろしいものと捉えており、年代が上がるにつれて受容される傾向が見られました。死を受け入れるためには、実際に死と向き合う経験が重要であることが示唆されています。
発見③:他者の死に対する抵抗感
多くの人が「自分が死ぬこと」よりも大切な人とのつながりが途切れることへの抵抗感が強いと答えています。これは孤独への恐れや人間関係に対する依存を反映しているのかもしれません。
発見④:男女の死に対する捉え方
男女間で死に関する意識に違いがあり、男性は訃報などのきっかけでしか死を意識しにくい傾向があります。女性は日常的に体調やニュースなどから死を意識することが多いという結果が出ました。
発見⑤:死と向き合うことで得られる「レジリエンス」
死と向き合う経験がある層は、不安に対して具体的な対処ができる傾向が強くなり、これが生きる力につながっている可能性があります。
発見⑥:故人への思い
故人に対する思いは年齢層によって異なり、若年層はネガティブな感情を抱きやすく、シニア層は感謝や懐かしみを感じることが分かりました。
発見⑦:「死の意識」が生への活力を生む
身近な人の死を経験したことが、生き方にポジティブな変化をもたらすことが多く、その経験が生きる力や心の平穏をもたらすといった意見が寄せられました。
3. 現代社会が抱える不安とその対策
調査からは、漠然とした不安を抱える人たちが多いことが浮き彫りになりました。死から目を背けることが常態化すると、現代人は脆弱になり、死と対峙する際に大きな力を欠いてしまうかもしれません。
筑地本願寺は、死への疎遠感が日常の不安感と関係している可能性に言及しながら、死を自然なプロセスとして捉えることの重要性を強調しています。仏教は「生死」を説き、私たちが生をいかに大切にするかを考える機会を与えてくれます。
4. 築地本願寺のサポート
築地本願寺では、多様な不安に寄り添うため、様々な相談窓口を設けています。僧侶との対話や、寺報『築地本願寺新報』による悩み相談コーナーなどがあり、地域の人々とのつながりを大切にしたサポートを提供しています。特に若い世代のニーズに応じた「生き方についてのアドバイスをくれる場」が求められていることにも注目が必要です。
5. おわりに
日々の生活の中で、私たちは死から目を背けがちですが、いつか必ず迎えるその時に備えて、どのように生きるか、自分自身をどう見つめるかが重要です。築地本願寺のメッセージが広がり、多くの人が自分らしい生き方を見つけるヒントとなることを願っています。