国内初の女性AI人材白書2025が示す新たな女性キャリアの可能性

女性AI人材白書2025の概要

2025年9月、一般社団法人Women AI Initiative Japan（WAIJ）は、国内初の「女性AI人材白書2025」を発表しました。この白書は、全国の女性1,116名を対象に行った「女性のAI活用・学習に関する実態調査」の結果をまとめたものです。本稿では、その重要な内容と背景について詳しく解説します。

白書発表の背景と目的

日本社会が直面する少子高齢化や人口減少の課題を受け、労働力人口は縮小しつつあります。一方で、女性の労働参加率は高まり、総務省統計局のデータによると、2025年6月には女性の就業率が75.7％に達しています。しかし、女性が多く従事している事務職やサービス業は、AIによって代替されやすい職種であることが懸念されています。

経済産業省の試算では、2040年には約214万人の事務職に余剰人材が生じる一方で、成長するAI業界では約326万人の人材不足が予測されています。このような構造的な需給ギャップは、女性一人ひとり、さらには社会全体が適切な対応を求められることを示唆しています。

この白書は、女性が新たなキャリアの選択肢を考える機会を提供し、企業や官公庁、教育機関が女性の活躍を支援する施策を検討するための指針となることを目指しています。特に、女性がAI時代において社会経済の担い手として自律的にキャリアを築くための基盤資料となる事を意図しています。

調査結果の概要

AI利用の実態

調査の結果、年齢や職種を問わず、多くの女性が生成AIに対して未活用という実態が浮かび上がりました。ほぼ毎日生成AIを使用する女性はわずか3〜5％。一方、学習意欲が高い層では、AIを毎日使う女性が約2人に1人という偏りも見られました。

世代間のギャップ

特に20代では生成AIの利用率が約3割と高いものの、50代以上の女性では「利用していない」が6割近くに達し、世代間のギャップも明らかです。このことから、AI活用の促進には、特に高齢層に向けた支援や環境整備が求められることが示唆されます。

AIへのネガティブな印象

生成AIに対する印象については、多くの女性が抱えるネガティブな意見が明らかになりました。「AIに頼りすぎるのは危険」と感じている女性は30.6％、また「取り組みたいが自分には難しそう」と思う女性は41.0％にものぼります。これらの意識が女性のAI活用を阻む要因となっていると考えられます。

キャリアへの影響と期待

一方で、約4割の女性が「新しいキャリアの可能性」を期待しているものの、「学びたいが方法が分からない」とか「情報が多くて選べない」といった不安が学習への障壁となっています。特に、「女性と一緒に学べるコミュニティ」への参加意向は80.6％に達し、共に学ぶ場の重要性が強調されています。

未来の展望とWAIJの取り組み

調査から見えるのは、女性たちがAIに対して期待を寄せている一方で、利用や学習に対するハードルが存在することです。これを受けてWAIJは、女性が挑戦し成長できるコミュニティの形成を進めていきます。毎年更新されるこの白書は、女性のAI利用状況をモニタリングし、経年的な変化を可視化していくことで、事実に基づく議論を広げていく狙いがあります。企業や官公庁、教育機関との連携を深め、女性がAIを活用できる環境を整えるための施策を展開していくことが期待されています。