産業医サービス導入の現状と課題：コスト重視のリスクと効率化の要点

産業医サービスの導入と運用の実態

近年、企業が健康経営を推進する中で、産業医サービスの導入が進んでいます。しかし、導入段階で「コストの安さ」を重視した結果、運用段階での課題や不満に直面する企業が増えていることが、株式会社Mediplatによる調査から明らかになりました。

調査背景と方法

株式会社Mediplatは、産業医サービスの導入・運用に関与する企業の担当者112名を対象に、「産業医サービスの導入・運用に関する実態調査」を実施しました。この調査は、産業医サービスの選定基準や導入後の運用状況についての実態を明らかにすることを目的としています。

価格重視が導くリスク

調査結果によると、92.8%もの担当者が産業医サービス導入時に「価格の安さ」を重視したと回答しています。その一方で、導入後には「運用サポートの不足」や「非効率による追加コスト」などの問題が浮き彫りになっています。特に、初めて産業医を選任する企業では、価格だけでなく、効率化や専門的な運用支援が必要であることが重要です。

導入後の運用サポート

調査では、96.4%が産業医サービス選定時に「導入後の運用サポート体制」を考慮したとしていますが、それでも「十分に考慮した」と答えたのは半数以下にとどまっています。このことは、多くの企業が初期のコストを優先して、将来的な支援体制を軽視していることを示唆しています。

アナログ管理が業務に与える影響

さらに、産業保健業務の運用に関する調査では、40.2%の企業が「産業医との面談記録や健康診断をアナログ管理している」と回答しました。このため、93.3%の企業がアナログ管理が業務効率にマイナスの影響を与えていると実感しています。業務の効率を保つためには、デジタル管理へのシフトが求められるでしょう。

業務負担の実態

アナログ管理による負担が大きい業務として、特に「産業医との連絡や情報連携」が66.7%で最多となりました。次いで「衛生委員会の準備・議事録作成」や「健診・ストレスチェック結果報告書の作成」が挙げられています。

追加コストの発生

調査結果では、約9割が産業医サービス導入後、非効率や支援の不足から「追加コスト（時間・費用）」が発生していると感じています。また、約8割が現在の運用サポートに不満があると答えており、これは今後の産業医サービスにおける改善が必要であることを示しています。

効率化と専門サポートの必要性

90%を超える企業が、産業保健業務を効率化するためには「健康管理システム」の導入だけでなく、運用支援やノウハウ提供までのサポートが必要だと認識しています。これからの産業医サービスは、単なる法令対応にとどまらず、従業員の健康維持と組織のパフォーマンス向上を意識したトータルな支援体制が必要です。

産業医選定のポイント

調査によると、産業医を選定する際の重要なポイントとして、「専門知識・経験」と「職場改善提案力」が同率で1位に選ばれました。企業は、ただ安いだけの産業医を選ぶのではなく、質の高い専門家を見極めることが必要です。

法令対応の安心感

最後に、産業医サービス選定において、64.3%が「法令対応の安心感」を重要視していることもわかりました。法令を遵守しつつ、効率的な業務運営がなされることが、企業の信頼性を高める鍵となります。

まとめ

今回の調査から、企業は産業医サービス導入時に価格や法令対応を重視するものの、運用段階での支援の不足に苦しむ状況が浮かび上がりました。特に初めて産業医を選任する企業では、コストだけでなく、システム効率化、専門ノウハウ、産業医の質を見極めることが将来的なトラブルを回避するために必要です。今後は、長期的な視点でサービス選定を行うことが、企業にとって必要不可欠と言えるでしょう。