未来を拓く光子技術
2025-08-06 16:19:04

量子通信の未来を拓く光子検出技術の革新

量子通信の未来を拓く光子検出技術の革新



近年、量子技術が私たちの社会を大きく変えるポテンシャルを秘めていることが注目されています。中でも、光の最小単位である光子を活用したさまざまな応用は、世界中の研究機関や企業の関心を集めています。そんな中、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)から新たな研究成果が発表されました。それは、光通信の核心を成すC-bandにおいて、1光子単位で精確に出力できる波長可変の光源が開発されたというものです。この革新は、量子通信や量子コンピューターの安全性や信頼性を飛躍的に向上させるものと期待されています。

光子のものさし—国家標準トレーサブルな光源の開発



光子は、通信や計算技術において重要な役割を果たす素粒子です。量子暗号通信や光量子コンピューターといった先端技術を実現するためには、光を扱う際に「光源から検出器に何個の光子が届いているか」を精密に計測する必要があります。しかし、従来の技術では、光子検出器の性能を正確に評価することが課題でした。特に、C-bandにおける波長帯全域での検出精度が求められていたのです。

研究チームは、国家標準にトレーサブルな波長可変光源を開発しました。この光源を“光子のものさし”として利用することで、C-band全域の光子検出器の性能が高精度に測定できることが可能になりました。これにより、特定の波長に限らず、幅広い波長での量子通信の安全性を保証する基盤が整いました。

量子暗号通信と光量子コンピューターの進展



量子暗号通信は、光子の特性を利用して通信の安全性を確保する技術です。送信者と受信者の間で、外部からの干渉を検出することで、高度なセキュリティを実現します。光量子コンピューターは、従来の計算機に比べて高次元の計算を短時間で行うことができるため、その実用化が進められています。しかし、これらの技術が広く普及するためには、光子を正確に制御し、その数を正しく把握する必要があります。

研究チームが開発した新たな光源は、C-bandでの光子数を評価するための新基準となるもので、各波長での検出効率が高精度で測定できることが確認されています。この結果、量子暗号通信の安全性が向上するだけでなく、光量子コンピューターの計算精度も改善されることが期待されます。

光子検出器性能評価の新たな高精度化



開発された標準量子光源を用い、実際の光子検出器、具体的には超伝導転移端センサー(TES)などの性能を評価したところ、1510 nmから1570 nmのC-band全域での検出効率の評価が可能なことが証明されました。これにより、これまで限定的だった評価技術の深化が進み、 C-band全域にわたって検出器の性能を信頼性高く測定する基盤が構築されました。

この新技術は、量子通信と計算技術の発展において革命的な進展をもたらすものであり、波長多重化や並列処理を通じてさらなる進化が期待されます。さらに、高速なデータ伝送や時間分解測定においても、その重要性は増すばかりです。

今後の展望と社会的意義



光通信波長帯であるC-bandを利用した新しい光子検出技術は、量子暗号通信や光量子コンピューターなどの先端技術においてますます重要な役割を果たすでしょう。この技術の基盤を元に、量子暗号通信や光量子コンピューターの実用化が加速されることが期待され、次世代の量子社会を支える基礎技術としての可能性が広がります。

画期的なこの成果は、2025年7月25日に「Optics and Laser Technology」に掲載され、多くの研究者や技術者に新たなインスピレーションを与えることでしょう。それにより、量子通信と量子情報処理分野における更なる革新が促進されることを期待しています。


画像1

画像2

画像3

関連リンク

サードペディア百科事典: 産総研 量子通信 光子

トピックス(その他)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。