おしゃれな介護服の新たな潮流
介護という言葉がつく服には、一般的に機能性重視の選択肢が多いですが、滋賀県湖南市の「ハート&アシスト」が開発した介護服は、その概念を覆します。ここにおいて重要な革新が、特許を取得した「高島ちぢみ」100%のブラウスです。
介護現場の声から生まれた発想
「ハート&アシスト」の代表である平木愛さんが介護服の開発に着手したのは2019年のこと。鍼灸マッサージ院を経営しつつも、訪問先で聞こえてきた高齢者やその家族の悩みは、日常生活の様々な相談が中心でした。その中でも特に多かったのが、「自分が着たいと思えるおしゃれな服がない」との声でした。
特に認知症を抱える利用者の家族から具体的な要望を受けた平木さんは、「こういった服があったらいいな」という意見を真摯に受け止め、自らの経験から介護服の開発を決心します。まずは、目の前の人々のニーズを形にしようと取り組みました。
素人から始まった服作りの挑戦
介護服の開発は平木さんにとって全くの未経験の領域。しかし、「何とかなる」と思い、地域の商工会を頼りにし、特産の「高島ちぢみ」を扱う事業者とつながりを持ちました。こうして、上質な素材を生かしたブラウス作りのスタートが切られました。
その後、素材の選定やデザイン、縫製の知識が求められる中、信頼できるパートナーを探し続け、試行錯誤を重ねながら、ついに2020年に介護服『La・フック®19×2(ラ・フックイチキュウバイツー)』が完成しました。
介護服の新しいスタンダード
この介護服は、従来の介護服にはなかった「おしゃれさ」を取り入れました。着る人だけでなく、介助する人にも優しいデザインで、実際の使用シーンを重視した作りが特徴です。特に注目すべきは、背中のフックを使って裾を調整できるユニークな機能。自身の着やすさを考慮しつつ、介助を行う側の利便性も確保しています。
また、材質に関しても、肌に優しい綿100%の「高島ちぢみ」を使用しており、着心地やお手入れのしやすさも兼ね備えています。着替えやすさを追求し、細部まで工夫したデザインは、機能性とおしゃれが両立した新しい介護服の形となりました。
反響と今後の展望
2020年の夏から販売を開始し、クラウドファンディングや展示販売会を通じて、着実に反響を広げています。介護服という言葉には少し抵抗を感じる人もいるため、「ケアウェア」という名称へとシフトし、より多くの人に受け入れられるよう工夫が施されています。
実際に、地元のふるさと納税でこの商品を知って購入したという東京在住の方の声からも、真に必要とされる商品であることが実証されています。さまざまな介護関連のニーズに合致した服の開発は、この分野における新しい潮流となるでしょう。
地域と高齢者の架け橋
平木さんは「介護現場の声を生かしたモノとサービスの充実を目指して」と語ります。地域住民、医療・介護の専門職、企業が連携して、ターゲットとなる人々に必要な選択肢を提供する環境を作りたいという思いが、今後の目標とされています。高齢者が自立できる生活を支えるために、服飾の分野からも大きな変革が必要なのです。
この介護服「La・フック」は、ただの衣服であるだけでなく、多くの人々の生活の質を向上させるための重要な役割を果たします。今後の活動から目が離せません。