肺がんの多遺伝子検査普及とその課題についての最新研究
日本では、非小細胞肺がん(NSCLC)患者のための多遺伝子検査が急速に普及してきていますが、その一方で、実に約3割の患者が遺伝子検査を受けていないという厳しい現実があります。この状況を受けて、株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)と関西医科大学、アライアンス・フォー・ラング・キャンサー(A4LC)、近畿大学の共同研究が、最新の研究結果を発表しました。研究成果は、日本癌学会の英文誌『Cancer Science』に掲載されています。
研究の背景と概要
この研究は、全国300の病院におけるStage IV非小細胞肺がん患者24,047人を対象に、2019年から2024年にかけての遺伝子検査と初回治療の実態を明らかにするものでした。特に、「多遺伝子検査」が急成長を遂げていることが示され、希少なドライバー遺伝子に焦点を当てた治療が拡大しています。
多遺伝子検査の進展
最近では、5種類以上のドライバー遺伝子を調査する患者が急増し、特に2021年後半からはその数が急増しました。具体的には、EGFRをはじめとするALK、ROS1、BRAFの検査率が上昇し、さらにはMETやRET、KRASといった genes にも多くの患者が検査を受けるようになっています。
一方で、遺伝子検査を受けていない患者の割合はおおよそ30%と変わらず、地域や年齢を問わず同様の傾向が見られました。特に高齢者においては未検査率が高いものの、各年代においても少なからず未検査者が存在しています。これらの患者が検査を受けていない理由には、全身状態や腫瘍の検体不足、早急な治療の必要性などさまざまな要因が考えられます。
未検査患者の影響
興味深いことに、遺伝子検査を受けなかった患者の中の25.4%は、その後の薬物療法も行われていないことが明らかになりました。これは、未検査の患者に対して適切な治療が提供されていない可能性を示唆しています。研究者たちは、遺伝子検査を行わなかった患者が、実際には全身状態などにより薬物療法が難しいと判断されているケースも考えられると指摘しています。
希少な遺伝子変異に対する治療の増加
また、分子標的薬を利用した患者の割合は、2019年から2024年の間でおおよそ3割で推移しているものの、EGFRやALKに加え、METやRETなど希少なドライバー遺伝子をターゲットとする治療薬の使用も増加しています。これにより、多遺伝子検査の普及が臨床現場での治療選択の幅を広げていると言えるでしょう。
今後の展望
研究チームは、遺伝子検査の未実施者が約3割存在する現状は、5年間の調査期間を通じてほとんど変わっていないと述べています。この課題を克服するためには、患者に向けた十分な情報提供と、医療者との「共同意思決定」が重要とされています。
このような取り組みが進めば、より多くの患者が遺伝子検査を受け、適切な治療へとつながることが期待されます。今後も、この分野での進展に注目が集まること間違いありません。
研究に関する詳細や、具体的なデータについては日本癌学会の資料を参照してください。