宿泊業界の秋のハイシーズン化がもたらす変化と新たな需要
株式会社宿場JAPANが発表した宿泊動向データを基に、近年の宿泊業界の変化について詳しく掘り下げます。2024年度のデータ分析では、特に秋の宿泊需要が増加しており、夏と比較して逆転する傾向が見られます。この変化は、インバウンド需要の拡大とともに、宿泊シーズンの分散化を促進しています。
1. 秋の宿泊需要の高まり
宿場JAPANは、夏を7〜8月、秋を10〜11月の宿泊シーズンと設定し、延べ宿泊者数を比較したところ、2022年以降に秋の宿泊者数が夏を上回る傾向が強まっています。この推移は、コロナ前の2018年頃に比べると明らかです。
2018年には夏が秋よりも2%以上の差を見せていましたが、2022年には秋が初めて夏を逆転。やがて2023年にはほぼ拮抗、2024年には再び秋が夏を3.8%上回る結果となりました。
この変化の主な要因として、インバウンド需要の増加が影響しています。海外からの旅行者は、訪日シーズンが国や地域により分散するため、夏に偏らず秋でも多くの旅行者が訪れるようになっているのです。
2. 新規利用者の増加とリピーターの減少
宿泊者データからは、全体の延べ宿泊者数がコロナ前の2018年よりも上回っていることが確認されました。その背景には、新規利用者の増加が挙げられますが、リピーターの割合は減少しています。2023年以降は、海外からの宿泊者が全体の60%を超え、日本人客との比率は逆転しています。
具体的には、2023年は61%が外国人、2024年には62%が外国人となり、コロナ前の比率とは大きくかけ離れた数字に変化しました。
3. インバウンド需要と地域の魅力
宿場JAPANのゲストハウスが位置する北品川エリアは、羽田空港や品川駅へのアクセスが良好です。そのため、観光や出張、イベント目的の宿泊者が多く、宿泊ニーズも多岐にわたります。
特に秋は、海外からの旅行者が多く秋に訪れる棲み分けが進んでいることが要因であり、国内旅行客の集中する夏季とは異なる傾向が見られます。
4. 対策と新しい試み
今後、宿場JAPANでは多様なニーズに応えるための施策を強化していく方針です。具体的には、「品川宿ウォーキングツアー」を通じて地域の魅力を伝えたり、最新情報をスタッフ間で共有し、リピーターの満足度を高める取り組みが行われています。宿泊者とのコミュニケーションを強化し、より質の高いサービスを提供することに注力しています。
スタッフは地域に密着した生活を送っており、この立地と日常生活が支える情報提供の質は、宿場JAPANの強みとなっています。地域のリビングのようなコモンルームを活用し、イベントやワークショップを開催するなど、ゲストとの交流を深めています。
5. 持続可能な経営に向けて
宿場JAPANは、持続可能な経営を視野に入れ、リピーターの増加を図るための施策を講じています。外的要因に左右されやすいインバウンド需要に頼るのではなく、顧客を再訪者へと育てることが企業の成長に繋がると考えています。
インバウンド需要の拡大は急速に進んでいますが、地域に根ざしたビジネス展開が今後の成功には不可欠です。これからも新たな試みや地域との連携を強化し、観光産業の復興と発展に寄与することを目指していきます。
これらのデータは、宿場JAPANの健康的で持続可能な運営に向けた戦略が成り立っていることを示しています。訪れる旅行者と地域が共に成長・発展していくサポートを提供し続ける企業であることが求められています。