新たな角運動量反転現象の発見
東京理科大学をはじめとする研究チームが、強磁場と高速回転が共存する「磁気渦物質」において新しい現象を理論的に明らかにしました。彼らの研究によると、電子の軌道角運動量がスピンよりも優位になり、これまで考えられていた偏極の方向とは逆向きになることが示されました。
研究の背景
物質のマクロな磁気特性や回転応答は、微視的な粒子が持つ角運動量によって決まります。これまで、角運動量偏極はスピンによって支配されると考えられてきましたが、今回の研究はその理解を大きく変えるものです。スピン優位の現象は、物質科学、相対論的原子核衝突実験など、様々な分野で広く利用されてきましたが、新たな理論的枠組みでは、軌道角運動量がより重要な役割を果たすことが明らかになったのです。
具体的な研究成果
強磁場がかかる条件で、ディラックフェルミオンを用いて理論的に解析したところ、スピンが支配する偏極とは異なり、軌道角運動量が重要な役割を持つことが分かりました。このような偏極の反転現象は、電荷密度にも影響し、弱磁場と強磁場間での符号反転が起こります。これは、スピン角運動量と軌道角運動量の基礎的な違いに起因するものと考えられます。
研究の意義
本研究成果は、原子核衝突実験や物質科学、量子光学などにおける新たな奇現象の探求に貢献するプラットフォームを提供します。また、理論の枠組みは量子色力学へも拡張可能であり、さらなる実験的検証が期待されます。特に、強磁場下での新たな物理現象やオービトロニクスへの応用も視野に入れた研究が進むことでしょう。
研究チームの構成
東京理科大学の豆田和也助教、東京大学の福嶋健二教授、浙江大学の服部恒一研究員らが共同で行ったこの研究は、2025年7月に国際学術誌『Physical Review Letters』に掲載されています。これにより、量子物質における理解が一層深まることが期待されます。
このように、今回の研究は物理の基礎概念を揺るがす内容であり、学問への新たな視点を提供する重要な成果です。私たちの知識を更に広げるために、今後の研究に注目していきたいと思います。