マンション修繕工事のリスクを軽減！新しい履行保証保険が登場

履行保証保険が変革をもたらす

マンションの大規模修繕工事には多くのリスクが伴います。近年、施工業者の倒産が増加している中、発注者であるマンション管理組合が安心して施工を進められる体制が求められています。そこで注目されているのが、一般社団法人マンションあんしんセンターと日新火災海上保険株式会社が共同開発した「マンション大規模修繕工事向け履行保証保険」です。

保険の改定とその背景

2025年9月より、本保険の保険金上限が従来の1000万円から3000万円に引き上げられることに伴い、修繕工事の規模に応じた選択肢が増えます。これまでの5000万円など、大きな工事に対し10%の補償を受けられる制度が求められている背景には、建設業界全体に蔓延する倒産リスクがあります。帝国データバンクの調査によると、2025年2月時点での倒産リスクがある企業は12万7000社に上り、その中でも建設業は最も高いリスクを抱えています。物価高や人手不足が企業の経営を圧迫し、実際に倒産に至るケースも増加しています。

編集者からの視点

マンション管理組合においては、施工業者の信用力を見極めることが難しい場合が多いため、倒産による工事中断のリスクは深刻です。この保証保険は、万が一の事態に備える実効性のある制度として期待されています。

保険の仕組みと特徴

履行保証保険は、工事契約を結んだ施工業者が倒産した場合、発注者に損害を補償する仕組みです。この保険の特徴を以下にまとめます。

1. 保険契約者：施工業者
2. 被保険者：発注者である管理組合や賃貸マンションのオーナー
3. 保険金額：請負契約金額の10%、または最大3000万円
4. 保険金使用制限：工事再開や完成のために、弁護士費用や追加工事費用に使用できる制限がありません。

例えば、請負金額が2億円の工事で施工業者が倒産した場合、発注者は最大2000万円の補償を受け、その資金を用いて工事再開の準備を進めることができます。この信頼性の高い仕組みが、多くの物件での導入を後押ししています。

入札条件としての浸透

本保険の導入は急速に進んでおり、2025年8月末までに申込み件数は160棟、審査を通過した施工業者は全国で75社に達しています。興味深いのは、申込みの9割が発注者や設計事務所からの要望であるという点です。これにより、施工業者に履行保証保険への加入を入札条件にする流れが加速し、業界全体におけるセキュリティを強化しています。

導入効果と今後の展望

履行保証保険は金銭的な補償を超えた効果を持ちます。
1つ目は、契約前の牽制力です。事前審査を通過しない施工業者は保険に加入できないため、信用度の高い企業を選別できます。
2つ目は、施工中の安心感です。施工中に予期せぬ事態が生じても、保険が役立つことで発注者の不安が軽減されます。
3つ目は、入札の透明性向上です。

主催者の意向で施工業者の選定が透明になることで、公正な入札が促進され、業界全体の信頼感が向上します。

今後もこの保証保険は、マンション管理組合や設計事務所への啓発を進め、施工業者にも加入を標準化させる動きを広めていく方針です。経営リスクが増大する中、万が一に備える制度という重要性がさらに増していくことが期待されます。ゆえにこの保険は単なる商品ではなく、安全な業者選定を実現する仕組みであることを広めていきたいと考えています。