船舶修繕の新しい時代へ
近年、環境への配慮が求められる中で、船舶業界でも持続可能な技術の導入が進められています。その一環として、古河電気工業株式会社(以下、古河電工)を中心とした4社のグループが「インフラレーザ™」を用いた新しい錆・塗膜除去システムの開発をすすめています。このシステムの実証実験が実船で行われ、成功を収めたことが広く報道されています。
錆・塗膜除去の現状
船舶修繕の作業では、現行のサンドブラスト工法が一般的に用いられています。この方法は、砂状の研削材を対象物にぶつけることによって錆や塗膜を除去しますが、廃棄物が飛散し、作業場の環境が悪化する問題がありました。特に、粉塵や騒音の面で作業員の健康に悪影響を及ぼす懸念が指摘されています。そして、この問題を解決する新たな手段として、古河電工が開発を進めていたレーザ技術が注目されているのです。
実証実験の経緯
2021年から古河電工が商船三井および商船三井ドライバルクと協力し、2022年からは常石造船との連携を深める中で、具体的なシステム開発が進められました。2024年12月には、商船三井の運航する船舶でインフラレーザ™を用いた実証実験が行われ、この技術の有効性が確認されました。この実証実験では、船舶の外板に直接レーザ施工を行い、従来の方法に代替する可能性が示されています。
環境保護と労働環境改善
この新しいシステムの最大の利点は、環境負荷を大幅に低減できる点にあります。サンドブラスト工法に比べ、廃棄物の排出が少なく、作業中の粉塵や騒音も最小限に抑えられるため、作業環境が劇的に改善されることが期待されています。また、「インフラレーザ™」の開発により、今後は船舶整備においても省人化や自動化が進むとされています。これは、労働環境の向上だけでなく、人手不足の課題にも対応することにつながります。
今後の展望
「インフラレーザ™」は、未来の船舶メンテナンスに革命をもたらす可能性を秘めています。また、これらの取り組みはSDGs(持続可能な開発目標)への入力とも密接に関連しており、各社が推進するESG経営や環境保全への努力も評価されています。
今後、これらの技術がさらに進化し、船舶業界全体に普及することで、持続可能な未来への道を切り開くことが期待されます。この取り組みは、海運業だけでなく、関連するさまざまな産業にも波及効果をもたらすでしょう。さらに、古河電工・常石造船・商船三井の共同の努力により、環境への配慮と効率性の両立が実現される日が待たれます。
船舶修繕の新しい時代が始まろうとしている中で、これらの企業が推進する革新的な技術に今後も注目していきたいと思います。