千葉大学発ベンチャーが目指す医療教育のDX化と問診力向上
千葉大学医学部附属病院から生まれたスタートアップ、
株式会社OPQRSTは、医学教育の現場に革新をもたらすため、AI技術を駆使した“AI模擬患者”問診シミュレーションを開発しました。このシミュレーションツールは、医療者が問診力を高め、患者にとって安心感のある医療を提供することを目的としています。2024年2月の創業を控えた同社の取り組みを詳しく見ていきましょう。
医療者に求められるコミュニケーション能力
問診は、医療現場において極めて重要な役割を果たします。患者との信頼関係を築き、共に意思決定をするためには、優れたコミュニケーション能力が求められます。しかし、医学生にとって実践的な経験を積むことは容易ではありません。実際、現在の医学教育では、模擬患者ボランティアを活用した訓練が主流となっていますが、公的試験であるOSCEが2023年から始まったことに伴い、医学生たちにとって模擬患者の確保は大きな課題となっています。
OPQRSTの開発背景
千葉大学附属病院の現役医師たちが中心となり運営されるOPQRSTは、こうした課題を解決するために、AIを活用した医療面接力を高めるシミュレーションツールを開発しました。特に注目すべきは、
AI模擬患者との問診シミュレーションです。このWEBサービスでは、実際の模擬患者と同様に、患者の性格や反応に応じたシミュレーションが可能であり、医学生は自己練習を行うことができます。
シミュレーションの特徴
OPQRSTでは、医療者が練習の際に必要とする情報を簡単に取得できるよう、フィードバック機能を搭載しています。サービス開始時点では、一般的な疾患に対応した
47種類の症例を提供し、その後も定期的に新たな症例を追加していく予定です。これにより、医学生は多様な疾患に対する問診力を養い、人間同様の感情や文脈を考慮したコミュニケーションスキルを向上させることができます。
DX化への道
医療提供の方法が多様化している現代において、医療者へのコミュニケーション能力の向上は急務です。この方向性に合わせ、OPQRSTは
公益財団法人ひまわりベンチャー育成基金の助成を受け、より一層の取り組みを進めています。将来的には、声の入出力機能やVRによるサービス提供も視野に入れ、より多くの医療者の教育に寄与する予定です。
経営陣の紹介
OPQRSTの代表取締役社長である栁田育孝氏は、千葉大学医学部附属病院の総合診療科にて教育と臨床をタッグを組んで行っています。また、取締役の横川大樹氏や内田瞬氏も、医療現場での豊富な経験を活かし、教育に情熱を注いでいます。これらの専門家たちが支えるスタートアップが、今後の医療教育にどのような変化をもたらすのか、期待が高まります。
まとめ
株式会社OPQRSTが目指すのは、すべての医療者が高い問診力を持ち、患者が安心して話せる環境を提供することです。AI模擬患者によるシミュレーションは、医学教育のDX化に貢献し、次世代の医療者が自信を持って患者に接するための重要な一歩となるでしょう。今後の展開が楽しみです。