火星深部の重いマグマの正体とは?
火星の内部に関する新たな研究が進展しています。この研究は、関西学院大学や岡山大学、島根大学、愛媛大学、そして海洋研究開発機構が共同で行ったもので、国際宇宙ステーション「きぼう」に設置された静電浮遊炉を活用した実験によって行われました。
研究の背景
2019年、NASAが火星探査機InSightを用いて火星の地震を初めて観測しました。この観測により、火星の内部構造についての理解が深まり、特に火星の中心に位置する核と、その上に存在する岩石層であるマントルとの間には、マグマの層が存在することが発見されました。これは火星の形成や進化の理解に非常に重要な情報です。
その中でも、液体のマグマが火星深部に安定して存在するためには、マグマの密度がマントルを構成する岩石よりも重くなる必要があります。この密度の問題は、火星マグマを理解するための大きな謎でした。
静電浮遊炉を用いた実験の実施
この研究グループは、国際宇宙ステーション「きぼう」に搭載された静電浮遊炉を利用し、これまでの地上の実験では難しかった条件下でのマグマの母体の材料を使った密度測定に成功しました。この実験では、SiO2が少なく鉄に富むケイ酸塩組成のマグマを扱いました。
結果として、鉄が豊富なケイ酸塩マグマが、火星マントルの岩石よりも高密度になることが明らかになりました。これは火星内部で重力的に安定に存在できるマグマの実体の理解に寄与し、火星の核とマントルの境界におけるケイ酸塩メルト層の形成の可能性を示唆する結果となっています。
火星形成初期のマグマの理解
この研究の成果は、火星形成初期において存在したマグマの海が結晶化する過程で、岩石よりも重いマグマが深部に沈むことを示唆しています。これにより、火星の核-マントル境界において重力的に安定なメルト層の存在が考えられています。
今後の展望
この研究成果は、2025年3月3日(日本時間)に国際的な学術誌「Communications Earth & Environment」に掲載されました。このマグマ研究の成果は、火星だけでなく、地球のマグマや内部構造の研究にも広く応用できる可能性があります。今後の研究によって、火星のさらなる謎が解明され、人類が宇宙での生活様式を見直す手助けとなることでしょう。
このように、国際宇宙ステーション「きぼう」での最新の研究は、宇宙探査の新たな可能性を切り開く重要な役割を担っています。火星の探索は、単に地球外生命の発見を目指すだけでなく、私たちの存在意義や宇宙の理解を深める宝庫であると言えるでしょう。