触覚と視覚の統合
2025-04-22 14:08:22

触覚と視覚を結びつける脳内メカニズムの特定に成功した研究

触覚と視覚の新たな融合の可能性



国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に所属する研究チームが、手で物をつかむ際の脳内での触覚と視覚の情報統合メカニズムを世界で初めて明らかにしました。今回の成果は、脳機能研究の新たなフロンティアを拓くものであり、X技術やAI技術への応用が期待されています。

研究の背景



私たちの生活において、視覚や聴覚、触覚などの異なる感覚は常に相互に作用しあっています。特に、物体を触れる際には、触覚と視覚が結びつくことで、物体の特性をより深く理解することが可能です。しかし、これらの感覚情報がどのように脳で統合され処理されているのかは、未だ多くの謎が残されていました。これまでは、各感覚がどのように連携しているのか、その詳細は不明でした。

研究の成果



今回の研究では、アクティブタッチにおいて指先で感じる触覚と、その動きに伴う視覚情報が脳内でどのように統合されるかが調べられました。研究チームは、高磁場の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、触覚情報と視覚情報を独立に操作し、その相互作用を分析しました。

特に注目すべきは、参加者が指を動かして知覚する硬さが、実際の触覚情報だけでなく、視覚情報にも影響されることが実証された点です。この結果は、触覚と視覚の効果的な統合が人間の知覚において重要な役割を果たすことを示しています。さらに、研究では、視覚情報と触覚情報が整合している場合に脳内の特定の部位が活性化することが確認され、これが感覚の統合処理に関与していることが示されました。

研究の意義



この研究の結果は、単に感覚統合の理解を深めるだけでなく、具体的な技術開発にも寄与します。たとえば、XR(拡張現実)技術やAI技術において、これらの脳の機能を活用することで、より効率的な情報提示が可能になり、ユーザーにリアルな体験を提供できる可能性が広がります。

具体的には、指の動作に基づいて触覚情報を補完する視覚情報の提供が実現すれば、触覚のコストを抑えつつ、現実の物体を再現することが可能になるでしょう。これにより、仮想空間での体験は一層リアルになり、ユーザーはより深い没入感を得ることができるようになると考えられます。

研究の今後



今後は、脳内の感覚情報の統合に関する知見をさらに深め、さまざまな分野での応用を目指していく予定です。特に、マルチモーダル情報を活用したAI技術の開発に向けて、人間の感覚処理のメカニズムを理解し、共感や協調を持つAIの実現を目指して研究を進めていくことが期待されています。

この重要な研究成果は、2025年3月5日に米国の科学誌『Imaging Neuroscience』に掲載され、さらに多くの研究者や技術者による活用が期待されています。


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