エバネッセント光を用いたナノ粒子の光学選別技術の革新
東京理科大学の研究グループが、エバネッセント円偏光を活用し、ナノ光ファイバーを通じてキラルなナノ粒子を選択的に輸送する技術に成功しました。本研究は、薬剤などのキラル分子の非接触光学分離技術を実現させるための重要な一歩となり、この技術が将来の創薬分野において果たす役割について紹介します。
研究の背景
医薬品の製造において、鏡像異性体(エナンチオマー)の分離は長年の課題です。エナンチオマーは鏡像同士の関係にあり、その一方だけが効果を持つ場合が多く、正確な分離が必要とされています。しかし、ナノスケールの微小物体では光圧が弱まり、熱雑音が干渉し、実用的な分離技術の確立が難しい状況です。
研究の内容
研究では、東京理科大学のMark Sadgrove教授、Georgiy Tkachenko助教らが中心となり、エバネッセント光を利用しました。エバネッセント光とは、媒質の境界面で全反射が発生したときに、界面の外側にしみ出てくる光のことです。この光を用いて、ナノ粒子の輸送速度を円偏光の掌性に基づいて調整することができることを実証しました。
研究チームは、ナノ光ファイバー上に分散したキラルなナノ粒子を基に実験を行い、異なる円偏光を用いてその速度が大きく変わることを確認しました。これにより、円偏光を切り替えることでナノ粒子の輸送方向を簡単に制御できることが実証されています。
さらに、2つの光を別々の方向から入射させることで、キラルな成分以外の影響を打ち消し、純粋なキラル光圧をナノ粒子に効率的に作用させることに成功しました。研究の結果、100 nmスケールでのエナンチオマー分離が実現され、その手法の普遍性と妥当性が立証されました。
未来への展望
この技術が商業化されれば、薬剤の製造におけるエナンチオマーの正確な分離が見込まれ、医薬品の信頼性向上や副作用の削減に貢献することが期待されます。また、光を用いた非接触の分離手法は、研究開発や新薬の創出においても大きな意味を持つと考えられます。
研究成果の発表
本研究の成果は、2026年4月16日に国際学術誌「Nature Communications」において発表され、その詳細な内容が紹介されました。今後の研究において、さらなる発展が期待されている分野と言えるでしょう。
これらの研究が進むことにより、創薬や化学合成の現場での新たな革新がもたらされることが期待されています。この成果を利用して、将来的には医療やさまざまな産業における利用への道が開けることでしょう。