酸性でも機能する酵素電極
2025-09-04 11:14:18

酸性条件でも機能する革新的な酵素電極の開発とその可能性

酸性条件でも機能する革新的な酵素電極の開発とその可能性



東京理科大学の創域理工学部、先端化学科に所属する四反田功准教授と彼のチームは、斜入射小角X線散乱法(GI-SAXS)を用いて、乳酸オキシダーゼ(LOx)を用いた新しい酵素電極の研究成果を発表しました。この研究は、特に酸性条件下での酵素の機能を保つために、糖型界面活性剤であるスクロースモノラウレートの利用が鍵となるものでした。近年、ウェアラブルデバイスの重要性が増しており、体液を使った非侵襲的手法でのモニタリング技術の進展が期待されていますが、これまでの多くの酵素は酸性環境では機能しづらいという課題がありました。

研究の核となるポイント



今回の研究の最大の特徴は、酸性条件下でも酵素が安定して機能する仕組みを解明した点です。LOxが酸性条件では失活することが多い中、スクロースモノラウレートが優れた安定化剤としての役割を果たすことを発見しました。具体的には、pH 5.0の条件下でもLOxがその活性の約80%を維持できることが示されました。この研究成果は、ウェアラブルデバイスの開発に新たな道を切り開くことが期待されています。

スクロースモノラウレートの効果



研究者たちは、スクロースモノラウレートがLOxと相互作用し、特定の構造を形成することを明らかにしました。GI-SAXSによる解析によれば、スクロースモノラウレートは電極表面においてヘキサゴナルおよび層状の構造を形成し、その中にLOxが埋め込まれることで、周囲の酸性環境から保護されています。この結果、LOxの周囲ではpHの変化が和らぎ、基質や仲介物質へのアクセスが可能になるのです。

電極の性能向上



安定化剤なしの場合、酸性条件下でのLOxの活性は約50%まで低下しますが、スクロースモノラウレートを使用した場合、活性は約80%に回復します。これは、スクロースモノラウレートが広範な酸性条件下でもLOxの機能を維持できることを示す重要な結果です。実際、本研究の結果はGI-SAXSが酵素電極の安定化剤のメカニズムを解明するための強力なツールであることを証明しています。

今後の展望



研究チームはこの成果を基に、汗中の乳酸をリアルタイムでモニタリングするウェアラブルデバイスの開発を目指しています。スポーツ分野や医療分野全般において、酸性条件下でのLOxの安定機能は特に価値が高く、トレーニング管理や熱中症対策など、多岐にわたる応用が見込まれます。

研究の意義



四反田准教授は、「酸性環境下でも酵素が安定して機能するメカニズムを明らかにすることができたのは、今後のウェアラブルデバイスの発展に大きく寄与するでしょう」と述べています。この研究成果は、技術の進化だけでなく、人々の生活の質を向上させるための新たな可能性を秘めています。

最後に、今回の研究結果は国際学術誌『Langmuir』に掲載されており、リファレンスとしては以下を参照ください:
  • - 論文タイトル:Sucrose Monolaurate as a Stabilizer for Lactate Oxidase Electrodes at Low pH: A Structural Analysis Based on Grazing Incidence Small-Angle X-ray Scattering
  • - DOI:10.1021/acs.langmuir.5c02857


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