菅原健彦氏の逝去を悼む
2023年7月8日、日本画家の菅原健彦氏が62歳という若さで急逝いたしました。菅原氏は、多摩美術大学でその才能を磨き、日本画の世界で数々の賞を受賞し、高い評価を得ていました。特に彼の作品は自然の美しさを描くことで、多くのファンやコレクターから愛され続けてきました。彼の生前のご厚情に感謝し、この場を借りてお知らせいたします。
葬儀は滋賀県大津市で7月13日に執り行われ、彼の作品に触れ、彼の生き様を共にした多くの人々がその旅立ちを哀悼しました。菅原氏は1962年に東京で生まれ、以降、彼の画業は日本国内外で大きな影響を及ぼしました。1996年に山梨に移住し、神代桜との出会いをきっかけとして、そのテーマは都市風景から大自然へと大きな転換を遂げました。
菅原氏の作品には、淡墨桜や滝桜、縄文杉といった日本の自然の象徴が描かれており、その圧倒的な表現力は多くの人々を魅了しました。「まさに天の仕業としか思えない邂逅」という言葉が示すように、彼の作品には自然との深い対話が表現されています。彼は自然と向き合うことで得られた衝撃を、そのまま絵筆で画面に再現しました。これは菅原氏の一貫したスタイルであり、彼の作品は常にその姿勢を反映していました。
特に、彼が青森十二湖で経験した突然の雹の降り方を見てインスパイアされ、秋の紅葉が冬景色に変わっていく様子を描いた「青池」は、彼の表現技法の新境地を示す一例です。こうした作品は、彼が自然界に対して抱いていた憧れと敬意の中で生まれました。菅原氏の遺した作品は、彼の感受性の豊かさと自然への深い理解を物語っています。
海外での公式デビューを果たしたアート・パリでは、彼のモノクロ作品が高評価を得ました。その後、彼は金箔を用いた新たな表現への挑戦を始め、独自の画風をますます深化させていきました。長谷川等伯や狩野永徳といった先達の影響も受けながら、彼の作品は唯一無二の存在感を放っていました。
また、菅原氏は多くの美術館やホテルに作品を収蔵されており、上野の森美術館やMOA美術館などでその魅力を堪能することができます。特にアマン東京、セントレジスホテル大阪、ザ・シンフォニーホールといった名所でも菅原氏の作品が見られ、多くのコレクターに愛されています。
今回、ギャルリーためながでは、今秋に予定していた菅原氏のパリでの個展を追悼回顧展として開催します。展覧会は10月9日より始まり、新たなモチーフや技法に挑戦した彼の作品も展示されます。この機会に、多くの方に菅原健彦氏の作品を鑑賞していただき、彼の遺志を継いでいただければ幸いです。彼の作品が生き続ける限り、彼の精神もまた我々と共に在り続けるのです。どうぞ皆様のご来場を心よりお待ちしております。