チオキサントン合成法
2025-02-03 10:47:49

短工程でチオキサントン類を合成する新手法の開発とその可能性

東京理科大学が発表したチオキサントン類の新たな合成手法とは



東京理科大学の研究グループは、チオキサントン類を短工程で合成する革新的な手法を開発しました。この新たな合成メソッドは、アライン中間体とチオ尿素の反応を利用するもので、今後、医薬品や有機材料など多岐にわたる分野への応用も期待されています。

研究の背景


チオキサントンは、有機硫黄化合物の一種であり、紫外線硬化剤や半導体材料として利用されている重要な化合物です。ただし、官能基を持つチオキサントンの合成や、π共役系を拡張した誘導体の合成は難しいとされています。これまで多くの合成法が研究されてきましたが、特に複雑な構造を持つ誘導体の合成がボトルネックとされていました。

研究の概要


東京理科大学先進工学部の吉田優准教授らの研究チームは、アライン中間体とチオ尿素の反応を行い、チオキサントン類を簡単に合成する手法が成功したと報告しています。その過程で、アライン中間体がチオカルボニル基に2回挿入される独特の反応機構を解明しました。

開発手法の詳細


研究チームは、炭酸セシウムと18-クラウン-6という触媒を用いて、o-シリルアリールトリフラートが生成するアライン中間体をチオ尿素と反応させる手法を考案しました。この反応は2段階のプロセスを経て、最終的に目的のチオキサントンを得ることが可能です。

この新手法の特筆すべき点は、o-シリルアリールトリフラートに付加した官能基を持つ素材を出発物質とすることにより、それに応じた様々な官能基を持つチオキサントン誘導体を得ることができる点です。これによって、多様な機能を持った有機硫黄化合物の合成が期待され、今後の研究展開が注目されています。

反応機構の解説


アライン中間体とチオ尿素との反応メカニズムは次のように構成されています:
1. o-シリルアリールトリフラートからアライン中間体が生成。
2. この中間体がチオ尿素と反応し、4員環が形成される(この時、初めのアライン中間体が挿入される)。
3. 生成した4員環が開環し、アミジニウム中間体が形成される。
4. 再度アライン中間体が挿入されることで、イミニウム中間体が生成。
5. 最後に、この中間体の加水分解によりチオキサントンが得られる。

この一連の反応によって、研究者は多様な官能基を有する様々なチオキサントン類の合成が可能であることを確認しました。

今後の期待


吉田准教授は、この研究が意義深いものであると強調し、「未開拓であったチオカルボニル化合物とアラインの反応性から、多くの新しい有機硫黄化合物が得られる可能性を秘めている」とコメントしています。この成果が持つ創薬や材料科学への波及効果が期待され、さらなる研究の展開が見込まれています。

研究結果の発表


本研究の成果は、2025年1月9日に国際学術誌「Organic Letters」にオンラインで発表されました。論文のリンクや詳細なデータは、東京理科大学の公式ウェブサイトで参照可能です。今後、チオキサントン類の新たな合成法が、様々な産業に革新をもたらすことを願っています。


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