量子情報の未来
2025-11-04 11:56:48

ヤーン・テラー効果の新たな発見が示す量子情報の未来

ヤーン・テラー効果の新たな発見



2023年10月29日、早稲田大学の研究チームが発表した研究成果が物理学界で注目を集めています。ヤーン・テラー効果に関連する新しい現象が発見され、固体中の電子のスピンが秩序を持つことで、結晶が歪むことが明らかになりました。この現象は、量子力学的な二準位系の問題を磁場によって調節することを可能にし、将来的には量子情報の分野に応用される可能性があります。

ヤーン・テラー効果とは


ヤーン・テラー効果は1937年に最初に提唱され、電子の軌道が複数のエネルギーを持つ状態が存在する場合、そのエネルギーの縮退を解消するために、結晶を歪ませる現象です。この効果が引き起こされることで、電子が特定の軌道を占有し、系全体のエネルギーを低下させることが知られています。これまで、この効果は多くの物質で観察されましたが、電子のスピンが直接的に関連することはほとんどありませんでした。

研究の画期的な発見


早稲田大学の勝藤拓郎教授を中心とする研究グループは、Co1-xFexV2O4という物質を用いて、電子のスピンが秩序化することでヤーン・テラー効果が引き起こされ、結晶の構造相転移が生じることを発見しました。特に、この研究ではFeの量に応じてスピンの秩序化がどのように結晶の構造に影響するかを詳しく調べました。

研究チームは、スピネル構造を持つ物質群の中から、FeV2O4とCoV2O4を対象にし、特にCo1-xFexV2O4の化合物において、スピンの秩序化がFeO4のヤーン・テラー効果と密接に関わることを明らかにしました。この発見は、スピンと軌道の結合が新たな物質の性質を引き出す可能性を示しています。

量子情報への応用


この研究の最も注目すべき点は、得られた知見が量子情報における新たな道を拓く可能性を秘めていることです。量子力学の観点から、電子のスピン状態を制御することで、情報処理に革新をもたらすことが期待されます。研究者たちは、量子ビットの実現に向け、Fe2+イオンの数を減らし、その状態を磁場で制御できる技術の開発を進めていく必要があります。

今後の展望


さらに、Fe2+イオンの代わりに非磁性のイオンを用いることで、新しい状態を形成できる可能性があり、電子のスピンと軌道の新たな相互作用における研究が進むことで、基礎科学の新たな領域が開かれる期待が高まっています。

この画期的な研究成果は、国際学術誌「Physical Review Letters」に掲載され、今後の物質科学や量子情報技術における進展に期待が寄せられています。日本の研究が世界の科学界に貢献していることを、私たちは改めて実感する機会となりました。


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